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【第4章】第1節 熱中症の災害事例(2)

1. 業種別災害の事例

(2) 製造現場の事例

 製造現場は室内であることが多いため対策がおろそかになりがちです。しかし熱が室内にこもったり、湿度が高かったりと、熱中症の要因が少なくありません。

 また、溶接などはもちろん、熱を発生する作業もありますし、機械設備が熱を帯びることもしばしばあります。そこで重要なのは空調管理でしょう。室内の温度調節はもとより除湿機能を充実させ、風通しを良くすることも必要です。前述したように単位作業箇所が熱いといったケースではスポット的にクーラーや大型扇風機をあてることもあり得るでしょう。

 ところで製造業のような状態を取る現場でも水分・塩分補給が不足していたという事例が見られます。特に多品種少量生産の現場では、存外、その時間が取れません。水分・塩分補給の時間を定期的に取るようにしましょう。

 また、ラインの中に入り、連続的な作業を強いられて、こまめな休憩が取れないことがあるのでその点注意が必要です。


事例1 作業を上がり休憩中、声かけるも返答なく。(気温37℃、湿度47%、50才代)
災害発生状況

発泡樹脂製造工場内で従業員 X は午前5時20分頃から加工された製品の運搬を行っていた 。X の勤務終了時間である午後2時になったため、作業を上がり休憩室内の椅子に腰をかけていた。しかし、午後5時25分頃、同僚が休憩室に入ったところ、 Xは椅子に横たわっており、声をかけても返答がなかった。救急車で病院に搬送されたが間もなく死亡した。

ワンポイント

早朝から午前中にかけて室内という、盲点を突いた災害熱中症は、高温多湿であれば、いつ、どこでも発生する。また本事例のように勤務終了後に発症することもしばしばある。

 

事例2 不測の行動の後、床に座り込む。(気温30℃ 湿度51%、40才代)
災害発生状況

午前中から工場の軒下で木材をパレットに積み込む作業を行っていた Xは 午後4時頃、作業位置を離れて工場内にある機械の操作盤を押すなどの不測の行動を取り始め、その後、床に座り込んだ。その様子を見ていた同僚が Xを休憩室に運んで床に寝かせたが口から泡を吹いていたため、救急車を呼び病院に搬送されたが同日に死亡した。

ワンポイント

熱中症の発症に伴うふらつきが顕著であった事例。工業の軒下ということで水分・塩分の補給は比較的に自由に行えるはずであったが休憩もままならないような状況下で対応できなかった。

 

事例3 プレス作業中に変調、工場外に出て倒れる。(気温30℃、湿度70%、40才代)
災害発生状況

プレス工Xは、午前8時からプレス機械で切断作業を行っていたが10時から10分間の休憩後、身体に変調をきたし、工場の外に出て、しばらくふらふら歩いていたが午前11時45分頃に倒れたため、病院に搬送された。午後1時19分に死亡した。

ワンポイント

前事例と同様に、プレス機械を連続的に使うという激しい作業を行っており、ふらつき、倒れた。工場内の空調が悪く、工程の自動化が進んでおらず水分・塩分を補給しがたいなどの環境があった。

 

事例4 上司の制止を聞かずに作業を継続し、被災。(気温33℃、湿度49% 40才代)
災害発生状況

作業員 X は午前8時30分頃から納品先の現場で品質試験を行っていた。作業が終了した午後11時10分頃、Xの体調を気遣った上司の制止を聞かず次の現場に向かった Xは 午前10時30分頃車の中で意識がもうろうとしていたところを発見された。救急車で病院に搬送されたが、まもなく死亡した。

ワンポイント

体調の悪化が分かった上司の気遣い(指示)が聴き入れられなかった。健康障害防止の基本が行いきれなかったと言える。

 

事例5 機械設備内に閉じ込められて被災。(気温は特定できず、湿度も特定できず、20才代)
災害発生状況

食肉加工工場に勤務していた Xは休日出勤して加熱殺菌設備内に入って清掃作業に従事していた。単独での作業で X は設備内に閉じ込められた。翌日出勤してきた同僚が倒れていたXを発見したが、すでに死亡していた。

ワンポイント

休日の単独作業という点が致命的だった。また、設備内部から開けられないという構造欠陥(安全面での)も指摘もされよう。

 

 

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