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【第4章】第1節 熱中症の災害事例(1)

1. 業種別災害の事例

(1) 建設現場の事例

 建設現場はよく屋外型の産業であると言われます。炎天下での作業が多く、屋外であれば温度の調整もできません。現場によっては輻射熱にさらされることにもなります。

 そこで、まずはできるだけ日陰を作って細かい作業を行わせることになります。シートや板を屋根として使った作業ヤードを作るのも良いでしょう。そうした場合、通風には十分に気を付けなければなりません。熱や湿気を逃すということです。

 ただそれでも限界があるため、やはり早めの水分塩分補給が重要になってきます。以下で紹介した事例でも水分・塩分の補給を認めていたにも関わらず発症しています。また休憩をこまめに挟むことも重要です。

 休憩の場所にも配慮しなければなりません。せっかく休憩時間を取っても炎天下では意味がありません。できればクーラーが効いた室内や社内、最低でも風通しの良い日陰で休ませるようにしましょう。

 もちろん休憩時にはしっかり水分、塩分を補給します。通行人が第一発見者であったとか姿が見えなくなったなどの事例は論外と言えるでしょう。


事例1 道路工事現場で座り込む。(気温33℃、湿度54%、30歳代)
災害発生状況

道路工事現場での舗装工事にあたって、作業者 X はスコップでアスファルトを堅固にする作業を行っていた。作業中、時々、水分・塩分を補給していた。しかし、午後3時頃 、 Xは ふらついたことから日陰で休憩したが、4時頃に意識を失って座り込んでしまった。それを通行人が発見病院に搬送されたが三日後に死亡した。

ワンポイント

適切な休憩場所がなく自ら日陰を探して休んでいたが現場の管理監督者同僚よりも先に通行人に発見されている。

 

事例2 バケツに手をついたまま動かず。(気温29℃、湿度53%、50才代)
災害発生状況

宅地造成現場で作業員 Xは土木作業をしていた。午後1時頃トラックの荷台上で生コンクリートをバケツに入れ、荷台下にいる同僚に渡す作業を行っていたが午後2時20分頃、荷台の上でバケツに手をついたままの姿勢で動かなくなってしまった。同僚が声をかけても動かない為、Xのシャツを脱がし、保冷剤で冷やすなどの応急処置を施した後、病院に搬送した。 Xは 20日後に死亡。

ワンポイント

1日で最も熱く日差しが強い時間帯での被災であった。体を冷やすなど対策の知識があっただけに予防ができなかったと悔やまれる。

 

事例3 植栽作業場所から50メートル離れた場所に倒れ。(気温33℃、湿度48%、20才代)
災害発生状況

建設工事現場内の一部で樹木の植栽や運搬などが行われており、 X は主に運搬を行っていた。午後1時30分頃 Xは 木の運搬を行った後、休憩に入った。午後2時30分頃ぐったりと座り込んでいた Xに同僚が「公園で休んでいれば」と声をかけたところ、 X は「うん」と返答した。公園の方向に歩いて行った X は午後3時30分頃、植栽作業場所から50メートル離れた場所で倒れていた。救急車で病院に搬送されたが、当日死亡した。

ワンポイント

同僚が声をかけることができたにもかかわらず、適切な休憩場がなく、また迅速な救急処置も講じられなかった点が残念なケース。

 

事例4 一人作業の後、宿舎内で被災。(気温27℃、湿度70%、50才代)
災害発生状況

作業者 X は建設工事の施行前、午前8時頃から現場内の事務所で事務機器の移動やそれに伴う片付け作業を行っていた。その後、10時頃から宿舎の部屋で休憩を取っていたが、なかなか現場に戻ってこないため、同僚が様子を見に行くと部屋で倒れていた。病院に搬送されたが翌日に死亡。

ワンポイント

事務所には電気設備があり高温であった。湿度も高かったが通風設備がなかった。また一人作業であり注意する人もいなかった。

 

事例5 住宅改装工事で電気の専門家が。(気温36℃、湿度83%。50才代)
災害発生状況

個人住宅の改装を行っている工事現場で作業員 X は午前中、コンセントの受け取り作業などを行い、午後は1時から2階屋根裏(狭い場所で25cm) でうつ伏せ状態で電気配線の作業を行っていた。午後3時頃、屋根裏からいびきのような音が聞こえてきたため同僚が屋根裏に上がったところ 、X が意識不明で倒れていたのを発見。病院に搬送したが当日死亡した。なお1時40分頃に作業道具を取りに X が屋根裏から降りてきたのが目撃されていた。

ワンポイント

気温、湿度共に高かったが場所的、作業的にも、こまめな水分・塩分の補給が困難であった。屋根裏は狭く厳しい作業姿勢を強いられていた。

 

事例6 めまい耳鳴り嘔吐の末に悪化。(気温32℃、湿度59%、50才代)
災害発生状況

住宅新築工事現場で瓦揚げ機を用いて瓦を運搬する作業を行っていた作業者Xは 午後の作業中30分の休憩を取った後の午後3時33分頃にめまい耳鳴りを訴え上司の指示により日陰で休んでいた。午後4時頃には嘔吐したため病院に行き治療を受けた後に帰宅した。しかし夜になって再び気分が悪くなったため、再診を受けてそのまま入院12日後に死亡した。

ワンポイント

こまめに水分塩分の補給ができない連続作業であった。めまい耳鳴りのようなはっきりした前兆が見られたがすぐに病院には搬送されなかった。

 

事例7 車両誘導中に意識を失う。(気温32℃、湿度66%、60才代)
災害発生状況

厳密には建設業ではないが建設工事現場周辺で発生した災害。現場の入退場門で車両や通行人の誘導を行っていた。作業者Xが、午後2時頃、体調不良を感じて付近の日陰に身を移し、腰を下ろしていた。その後、意識がもうろうとしてきて、立ち上がることもできなくなったところを現場作業員が見かけ体をタオルで冷やすなどしたが、意識がなくなった。救急車で病院に搬送されたが翌日死亡。誘導中は制服着用、スポーツドリンクの摂取は認められていた。

ワンポイント

作業者は60才代と高齢であり、また炎天下で制服などを着用していた場合、少量のスポーツドリンクの摂取では発症する危険性が高い。

 

 

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