プロがおすすめするリスクアセスメントの手法

「リスクアセスメントには、手法があります。」

こちらのページでは、リスクアセスメントを進める為に必要な『5つのステップ』を紹介いたします。

5つのステップを順次実施して、この手法をしっかりと身に付けましょう。

 

◆ 最初に、リスクアセスメントのキーワードを理解しよう。

昨今、事故災害の未然防止の方法として、リスクアセスメントの手法が広く導入され実施されています。リスクアセスメントとは、一言でいえばリスクの事前評価のことです。

それでは、リスクとは何でしょうか。また安全とは何でしょうか。リスクアセスメントを実施するために必要なキーワードを理解することから始めましょう。

リスクとは

「リスク」という言葉を最近よく耳にしますが、難しい定義を知らなくても私たちは感覚的にその意味を知っています。例えば、どこの家庭にもある「包丁」ですが、これは「リスク」があるでしょうか?それとも無いでしょうか?と問われれば、たいていの人は「ある」と答えるのではないでしょうか。

同様に、「野球」や「バレーボール」といったスポーツ、「駆け足」や「階段の上り下り」といった動作、「電車」や「自動車」といった乗り物、「飴玉」や「餅」などの食品・・・様々な物・場合について考えてみると、私たちの身の回りには無数の「リスク」が存在していることがわかります。私たちは「リスク」と付き合いながら生活している、と言ってもよいかもしれません。

さて、「リスク」とはいったい何なのでしょうか?

辞書やインターネットの記事で調べてみますと、以下のような説明がされています。

  • 「危険」や「危機」
  • 危険の生じる可能性
  • 危険度
  • 将来いずれかの時に起こる不確定な事象とその影響
  • 何か悪い事が起こる可能性

どうもひとことで言い切れるようなものでもないようですが、ここでは「リスク」とは、「人にとって良くないことが起こる確率と、起こった時の危害の程度の組み合わせ」と定義付けたいと思います。
(※良し悪しに関わらず、「発生が不確実な事象」全般を指す考え方もあります)

例えば、「包丁」について考えてみますと、「良くないこと」とは「誤って手を切ってしまう」ことが考えられますが、そのことの「起こる確率」と「危害の程度(この場合はけがの程度)」は、「ごくまれに(比較的軽い)切り傷を負う」といったことになるでしょう。従って、「決して無害とは言えない」ということで「リスクがある」と判定するわけです。

さらにこのことを労働災害に置き換えて考えてみますと、

「人にとって良くないことが起こる確率」→「仕事の上で負傷又は疾病が発生する可能性」
「人にとって良くないことの程度」→「発生した時の負傷又は疾病の程度(重篤度)」

であり、下図の四角の面積が「リスクの大きさ」を示しています。

労働災害リスクとは

※なお、厚生労働省が平成18年(2006年)に示した「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」では、リスクとは「危険性又は有害性によって生ずるおそれのある負傷又は疾病の重篤度及び発生する可能性の度合」と規定されています。

図1 事故災害の発生メカニズム

また、事故災害は、危険源(労働災害を引き起こす潜在的根源)が不安全な状態であったり、危険源に人が不安全な行動で接触したりするときに発生します。

事故災害を減らすために、事故災害の発生頻度および重篤度によって、事故災害の発生を防止するために優先順位をつけて対策をたてます。すなわち、事故災害の発生頻度と重篤度の両者を考慮して(組み合わせて)、未然対策をたてることがポイントです。

危険源とリスクの違いとは

危険源とは、労働者に負傷又は疾病を生じさせる潜在的な根源であり、「ハザード」と呼ばれます。労働安全衛生法では、「危険性又は有害性」と表現されています。

リスクは、危険源が不安全な状態であったり、危険源に人が不安全な行動で接触したりするときに発生します。労働安全衛生法では、「危険性又は有害性等」と表現されています。

表1 危険性又は有害性

受け入れ可能なリスクと許容可能なリスクとは

図2 リスクの大きさとリスクの種類

リスクには、「受け入れ可能なリスク」と「許容可能なリスク」があります。

前者の「受け入れ可能なリスク」とは、リスクが顕在化して災害に至っても、かすり傷程度の微傷なリスクで、広く受け入れられるリスクであります。

「受け入れ可能なリスク」にまで、リスクを低減するのが理想ですが、現実は、リスク低減対策には大きなコストがかかること、また便益が損なわれることを考慮して、「広く受け入れ可能なリスク」にまで、リスクを低減しない、すなわち許容してもよいリスクが存在します。
これが後者の「許容可能なリスク」であります。また、「許容可能なリスク」よりも高いリスクの状態を「許容不可能なリスク」といいます。

自動車の運転を考えてみますと、我が国で毎年4000人以上の人が交通事故で死亡しています。労働災害による死亡よりも4倍も多くの人が死亡しています。これは、誰もが受け入れられるような小さなリスクであるとは言えません。しかし、利便性を考えて多くの人が運転しています。これは、自動車を運転することが、「許容可能なリスク」と容認しているからです。

安全とは

「安全」という言葉について考えてみますと、どうもつかみどころがないことに気付きます。

例えば、

  • 10年間無事故無違反だったドライバーが「安全運転」しかしなかったのか?
  • 1年間無事故の建設現場は「安全」なのか?
  • ケガが発生していないことが「安全」と言えるのか?

よく考えると、いずれも?と首をかしげてしまいそうです。

「安全」とは一体どういうことなのでしょうか?

国際的な安全の定義については2014年、ISO/IEC GUIDE 51:2014で「許容できないリスクがないこと」と定義されています。

安全とは許容できないリスクがないこと

つまり、「絶対安全」ということはなく常にリスクは存在しているが、それが許容できる範囲なら「安全」として考えよう、といった意味です。確かにこう考えると、『リスクとは』の章に出てきた「包丁」についても当てはまるような気がします。
「たまに指を切ることもあるが、それほどたびたびでもないし、大けがをするほどでもないので、この程度なら(得られる利益・利便と比較して)それほど大きな危険はない(≒安全)と考えて使ってもいいだろう」、といった意味合いになります。

こういった考え方によると、安全化とは「リスクを許容限度以下に抑えること」になります。

従って、「リスクの大きさ」がわかれば「許容限度」と比較して、それを超えるものについて対策を講じていけば安全化につながることになります。

ただし、ここに一つの疑問があります。それは「許容限度」には基準があるのか?ということです。例えば脚立から転落することを想定し、その可能性やけがの程度には国際的な基準や、公的な基準があるのかということです。

答えは今のところ「ノー」です。(将来的にはわかりませんが)「許容限度」だけではなく、「可能性の度合い」や「重篤度」の見積り基準、あるいはそれらによって判定するリスクの大きさについての基準もありません。

リスクアセスメントはあくまで自主的な安全活動です。法令違反となる場合を除き、どういう基準を作って運用するかは個々の事業者に任されています。例えば、ある事業者にとって「受け入れられないリスク」という判定であったとしても、他の事業者に適用するものではないということです。
スーパーマーケットで10kgの荷物を持ち上げ移動することが「受け入れられないリスク」と判定されたとしても、同じことを建設業の事業者で「受け入れられないリスク」と判定するかどうかは不明です。なぜなら対象となる集団の構成メンバー(性別・年齢などの違い)や作業頻度も変わってくるからです。

このように、「リスク」についての判断は人や集団によっても違ってくるということを踏まえたうえで、各事業者・各職場に適した基準を作りリスクアセスメントを実施して戴きたいと思います。

実際リスクを低減するにあたっては、ある程度のリスクは残ること(これを「残留リスク」といいます)を容認して、「許容可能なリスク」にまで低減する対策を立てます。したがって、絶対安全ではありません。また、さらなる安全を目指し、広く受け入れ可能なリスクにまで低減することに努めなければいけません。

図3 安全と残留リスク

リスクアセスメントとは

リスクアセスメントとは?

「リスク」に「アセスメント」がついていますが、アセスメントとは

  • 調査
  • 事前影響調査
  • 評価
  • 査定

といった意味があります。

ですから、リスクアセスメントとは「リスクの調査・評価」といった意味合いになります。なお、現在労働安全衛生の分野(企業や現場など)で使われている「リスクアセスメント」という用語は、これに加えて「調査の結果による対策・改善措置」も含まれて使用されているのが一般的です。

従って、職場で扱うリスクアセスメントとは、『業務のうえで「負傷又は疾病が発生する可能性」があることがらについて、その「可能性の程度」と、万一発生した場合の「負傷又は疾病の重篤度」を見積もってリスクの大きさを評価し、必要な場合は対策を検討して実施すること』、といった意味になります。

つまりリスクアセスメントとは、事故災害を未然に防止する目的でリスクを事前に評価して対策をたて実施する手法です。

具体的には、①危険性又は有害性を特定し、②リスクを見積って、リスクを優先順位づけし、③リスクの低減措置を検討し、④リスク低減措置を実施することを体系的に進めます。(労働安全衛生法第28条の2)

図4 リスクアセスメントの体系

労働安全衛生法では、リスクアセスメントを「危険性又は有害性等の調査」と表現し、リスクアセスメントの実施とその結果に基づくための必要な措置を「調査の結果に基づく措置」と表現していますが、以下本稿では、「リスクアセスメント」は、措置まで含めて話を進めます。

リスクアセスメントの説明動画

 

◆ リスクアセスメントは、なぜ必要なのでしょうか。

背景にある労働災害の現状と法的位置づけ、およびリスクアセスメントの効果をしっかりと認識しましょう。

なぜリスクアセスメント?① ~イギリスの取り組みと5ステップ方式~

各国の労働者10万人当たりの死亡災害発生率2015年

主要先進国の中で非常に労災死亡率が少ないのはイギリスですが、1974年にイギリスで労働安全衛生法が制定される際、専門委員会による『ローベンス報告』というのがあり、「安全衛生関係の法律が多すぎる」「行政機関も多くて複雑」「労災発生に応じて法律を次々作っても際限がない」など、それまでのやり方に対する反省・批判がなされました。それを受けて制定された法律はわずか84条で構成されています。

そして、法律を補うものとして進められた手法が、個々の企業の自主性に任せた「リスクアセスメント」だったのです。その結果、労災死亡率がとても低いと言われる国になっていったことから、日本でもこのことから学び、平成18年(2006年)に法制化されたという経緯があります。

つまり、基本的な法律は必要だが、それに加えて自主性的な活動が非常に大切だということが言えると思います。

また、イギリスでは誰でも簡単にリスクアセスメントを実施できるようにするため、手順をわかりやすい5つのステップにまとめることで実践率を向上させたそうです。

イギリス方式5ステップリスクアセスメント

なぜリスクアセスメント?① ~イギリスの取り組みと5ステップ方式~

死亡災害発生状況の推移

上の図は我が国の労災死亡者数のグラフですが、昭和47年(1972年)労働安全衛生法が制定される前と後を比べてみると、その違いに驚きます。もちろん、翌年(1973年)に起こった第1次オイルショックによる産業構造の変化や、公害問題など環境問題に対する社会全体の意識の変化なども影響していると思われますが、それらを差し引いても大変効果のあった法律と言われています。

ところで、この法令の中身はどうやって作られたのかというと、それ以前に起こった労働災害を分析し、そこから得られた内容を基にルール化したものと言えます。
別の言い方をすると、

  • 沢山起こったケースはルール化するが、レアなケースは除かれる
  • 死亡災害や重症災害への対策はルール化するが、そうでなければルール化しにくい
  • 広範な業種で起こることはルール化するが、特殊なケースなどはルール化しにくい

といったことが挙げられますが、社会全体に対し法令として制定するのですからやむを得ない面もあります。

これは国全体の基準であって守らなければならないが、国内全ての業務や労働環境をカバーするものとは限らず、法令を守っていれば災害が起きないとは言えないということがお分かりいただけると思います。

従って、リスクアセスメントは、安全衛生関係法令をカバーする自主的活動として必要不可欠なものと考えられます。

また、労働契約法(平成19年法律第128号)第5条では、以下の条文で使用者(事業者)の安全配慮義務を定めています。(労働者の安全への配慮)

第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

「安全配慮義務」は昭和40年代から(1960年代後半~70年代前半)の労働災害を巡る損害賠償訴訟の結果、使用者側の契約上の義務のひとつとして判例が積み重ねられ、「対象者の安全や健康を左右できる立場にある者が、災害の予見可能性と回避可能性がある限り、講じられる手段を尽くす義務」として運用されてきた経緯があります。

安全配慮義務の構成要件

リスクアセスメントとは正に災害の発生を予測=予見し、結果を回避すべく対策を講ずることですから、安全配慮義務を実行する有効な手段としても適した手法と言えます。

労働災害の現状

我が国の労働災害による休業4日以上の死傷者数は、減少傾向にありましたが、ここ数年11万人強と横ばいが続いています。

また、死亡者数もここ数年950人を超えている状態が続いています。さらに、一度に3人以上の死傷者を伴う重大災害は、ここ数年約250人から約290人とむしろ増加の傾向にあります。

図5 労働災害の状況

この背景として、設備の老朽化・大型化、高エネルギー化、工程の多様化・複雑化、混在作業の普及、熟練技能者の不足、技能の伝承不足があげられます。

こうした中、頭打ちにある労働災害件数を減少させるためには、経営者が積極的にリスクの取組に関与し、会社が一丸となって労働災害を未然に防止する活動、すなわちリスクアセスメントが必要となってきました。

法的位置づけ

労働安全衛生法により、リスクアセスメントに関する事項が規定されています。

(1) リスクアセスメント実施の義務化

①次の2つの事業者について、リスクアセスメントの実施が努力義務化されています。
 (労働安全衛生法第28条の2、平成18年4月1日施行)

・化学物質等による労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれがある事業場
・安全管理者の選任義務のある業種の事業場

②さらに、指定された化学物質(平成28年6月1日現在640種類~SDS交付義務もあり)の製造・取り扱う事業場に対して、リスクアセスメントの実施が義務化されました。
 (労働安全衛生法第53条の3、平成28年6月1日施行)

(2) 安全委員会・衛生委員会の付議事項

安全委員会および衛生委員会の付議事項として、「リスクアセスメントの実施」が第2項に追加されています。
(労働安全衛生法第21条第2項、第22条第2項、平成18年4月1日施行)

(3) 総括安全衛生管理者の業務

総括安全衛生管理者の業務として、「リスクアセスメントの実施」が追加されています。
 (労働安全衛生法第10条第5項、労働安全衛生規則第3条2第2項、平成18年4月1日施行)

(4) 安全管理者、衛生管理者の業務

安全管理者および衛生管理者の業務として、リスクアセスメントの実施が追加されています。
 (労働安全衛生法第11条、第12条、平成18年4月1日施行)

(5) 安全管理者、職長教育の教育項目

安全管理者の選任に伴う研修や事業者責任とし実施しなければならない職長教育の教育項目にリスクアセスメントがある。
(労働安全衛生規則第5条、基発0224004号、労働安全衛生規則第40条、平成18年4月1日施行)

(6) 機械等の設置に伴う計画届の免除要件

事業者は、製造業等で定格容量300kW以上の建設物や機械等(仮設を除く。)を設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を工事開始の 30 日前までに、労働基準監督署長に届け出なければなりませんが、その計画届の免除要件のひとつに、リスクアセスメントの実施があります。
 (労働安全衛生法第88条、労働安全衛生規則第87条、平成18年4月1日施行)

 

◆ リスクアセスメントには、手法があります。

次の『5つのステップ』を順次実施してください。

ステップ1 危険性又は有害性の特定

表2 危険性又は有害性を特定するための情報源

ここでいう、「危険性又は有害性の特定」とは、特定した危険性又は有害性が「災害に至るまでのプロセス」を予測することをいいます。

したがって、「~するとき、~したので(危険性又は有害性に接近)、~になる(災害)」又は「~なので、~して(危険性又は有害性に接近)、~になる(災害)」と表現してください。

危険性又は有害性を特定するための情報源は、毎日の作業手順、ヒヤリハット活動、安全施工サイクル、安全パトロール、事故災害事例、安全目標の達成評価、前年度の災害発生状況などがありますので、それらを参考にするとよろしいかと思います。

ステップ2-1 リスクの見積もり

表3 リスクの見積もり(加算法)

リスクには程度があって、リスクが大きいほど、負傷又は疾病の重篤度が高いか、発生する可能性が高いかのどちらかです。リスクの程度を知るには、リスクの程度を数値化してあげるとわかりやすいと思います。

高い数値ほど、リスクの程度は高いことになります。数値化する方法には、3段階法と4段階法がありますが、ここでは、簡潔な3段階法の加算式をとりあげます。

[負傷又は疾病の重篤度]

  • 3—–死亡、極めて重大(永久的損傷、休業災害1か月以上、腕・足の切断、重症中毒)
  • 2—–重大(休業災害1か月未満)
  • 1—–軽微(不休災害やかすり傷)

[発生の可能性]

  • 3—–確実又は可能性が極めて高い(よほど注意しないと負傷する又は疾病になる)
  • 2—-可能性がある(注意していないと負傷する又は疾病になる)
  • 1—-ほとんどない(注意していなくてもほとんど負傷しない又は疾病にならない)

[リスクの見積もり([負傷又は疾病の重篤度]+ [発生の可能性]と加算した数値)

  • 6—-直ちに解決すべき問題がある
  • 5—重大な問題がある
  • 4—かなり問題がある
  • 3—多少問題がある
  • 2—問題は少ない

ステップ2-2 リスクの優先順位づけ

表4 リスクの見積もりと優先順位

リスクを見積もった数値に対して、それぞれ優先順位をつけます。

  • 見積もり6—優先度Ⅴ(即座に対策が必要)
  • 見積もり5—優先度Ⅳ(速やかに対策が必要)
  • 見積もり4—優先度Ⅲ(何らかの対策が必要)
  • 見積もり3—優先度Ⅱ(必要に応じて対策する)
  • 見積もり2—優先度Ⅰ(対策の必要なし)

ステップ3 リスク低減措置の検討

図6 リスク低減措置の手順

リスクの優先順位に従って、リスク低減措置を検討しますが、それにも決まった手順があります。すなわち、最初は、(1)本質的対策から検討してくださいということです。

ダメな場合は、順次(2)工学的対策、(3)管理的対策へと進み、最後に防御手段として(4)保護具の使用を検討するという手順です。
最初から、安易に保護具の使用の対策で終わりということがないように気をつけてください。

(1)本質的対策

 最初に設計・計画段階で方法や設備を見直すことです、すなわち本質的対策を講ずることです。

 例えば、リスクのある作業を見直し別の作業に変更するとか、設備を自動化して人の接触をなくしたりするとか、無害な材料に変更したりするとかです。

(2)工学的対策

 防護柵を設置して人が接触しないように隔離すること(隔離の原則)、または安全装置を取り付けて人が近づいたら機械が停止するインターロックの設置(停止の原則)といった工学的対策を講ずることです。

(3)管理的対策

 作業手順書や安全マニュアル(立入禁止の掲示も含む)で作業者に教育訓練するわけですが、作業者が正しく理解し、判断し、操作することで、不安全行動や不安全状態を取り除かれます。しかし、人は、ヒューマンエラーがつきまといますので、ヒューマンエラーの防止対策が必要となります。

(4)保護具の使用

 (1)~(3)の対策でリスクを除去・低減できなかった場合の最後の手段として、保護帽、安全靴、保護衣、保護マスクといった保護具を使用することで、身を守ることを検討します。

ステップ4 リスク低減措置の実施

実施するリスク低減措置が決定したら、実施担当者がリスク低減措置を実施します。なお、リスク低減措置実施後には、特定された危険性又は有害性について、作業者の意見を求め、再度、リスクの見積りを行い、リスク低減措置の効果と作業性、 生産性等に及ぼす影響を確認する必要があります。

また、措置後に新たな危険性又は有害性が生じていないかを確認することも大切です。 万が-、新たな危険性又は有害性が生じた場合には、実施したリスク除去・低減措置を再検討し、必要な措置を実施しなければなりません。

リスク低減措置を実施しても、技術上の問題などで、現状ではこれ以上リスクを低減できず、やむを得ず大きなリスクが残留してしまうことがあります。リスクが低減されていないものは、無理に下げずにそのままをリスクアセスメントの実施記録に記載し、その内容を作業者に周知させるとともに、必要な保護具の使用、安全な作業手順書の徹底を作業者に教育します 

ステップ5 リスク低減措置の記録と有効性の確認

リスクアセスメントを行い、リスク低減措置を実施したら、これですべて終了ではありません。

リスクアセスメントの結果を記録に残し、リスク低減措置が有効であったかを評価する必要があります。 効果があった低減措置は水平展開に活用できますし、効果がなかった低減措置は見直さなければいけません。

 

◆ 実際に、リスクアセスメントを実施してみましょう。

 

アーク溶接作業

屋内の炭酸ガスアーク溶接作業ですが、近くに塗料や段ボールが置かれています。

アーク溶接作業


ステップ1 危険性又は有害性の特定

  1. 溶接作業中に、発生するヒュームを常時吸って、じん肺になる。
  2. 溶接作業中に、発生するスパッタが飛散し、周囲の可燃物(塗料、段ボール等)に付着し火災・爆発し作業者が火傷する。
  3. 溶接作業中に、地震等の振動でボンベが転倒して作業者に当たり負傷する。

ステップ2 リスクの見積もりと優先度

  1. 重篤度3、発生の可能性2、見積もり5—–→Ⅳ(速やかに対応が必要)
  2. 重篤度3、発生の可能性3、見積もり6—-→Ⅴ(即座に対応が必要)
  3. 重篤度2、発生の可能性3、見積もり5—–→Ⅳ(速やかに対応が必要)

ステップ3 リスク低減措置の検討

  1. 局所排気装置の設置及び点検と防塵マスクの着用
    →重篤度1、発生の可能性1、見積もり2-→Ⅰ
  2. 周囲の可燃物を除去し、周囲に置かないようにする。
    →重篤度1、発生の可能性1、見積もり2-→Ⅰ
  3. ボンベを転倒防止用架台に設置し、二重チェーン掛けして固定する。
    →重篤度1、発生の可能性1、見積もり2-→Ⅰ

表5-1 リスクアセスメント実施一覧表(アーク溶接作業) ※画像をクリックで拡大

 

フォークリフト運搬作業

ボックスパレットのフォークリフト運搬作業ですが、前方に仕分け作業している作業者がいます。

フォークリフト運搬作業


ステップ1 危険性又は有害性の特定

  1. ボックスパレットを積みすぎて、前方の視野が見えないため、前方で作業していた人に突進し大けがを負わせる。
  2. ボックスパレットの高く積みすぎていたため、ボックスパレットが荷崩れて、前方で作業していた人に当たり負傷する。
  3. フォークリフトのパレットへの差し込みが浅かったため、ボックスパレットが荷崩れて、前方で作業していた人に当たり負傷する。

ステップ2 リスクの見積もりと優先度

  1. 重篤度3、発生の可能性3、見積もり6—–→Ⅴ(即座に対応が必要)
  2. 重篤度2、発生の可能性3、見積もり5—–→Ⅳ(速やかに対応が必要)
  3. 重篤度2、発生の可能性3、見積もり5—–→Ⅳ(速やかに対応が必要)

ステップ3 リスク低減措置の検討

  1. 前方の視野が見えない場合は、バック走行し、かつ速度を落とす。
    →重篤度2、発生の可能性1、見積もり3–→Ⅱ(必要に応じて対応する)
  2. ボックスパレットの高さは2段までとし、かつ荷崩れしないようにロープ掛けする。
    →重篤度1、発生の可能性1、見積もり2-→Ⅰ
  3. フォークをパレットの根本まで深く差し込み、かつ荷崩れしないようにロープ掛けする。
    →重篤度1、発生の可能性1、見積もり2-→Ⅰ

表5-2 リスクアセスメント実施一覧表(フォークリフト運搬作業)  ※画像をクリックで拡大

 

職長・安全衛生責任者教育

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