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【第3章】第8節 その他作業に伴う災害及びその防止方法③

3.災害事例と対策②

<事例4>
鉄骨の塗装作業中、足を踏み外して墜落

【災害発生状況】

この災害は、7階建ての建物の新築工事現場で、鉄骨柱のタラップを足がかりにして鉄骨の塗装作業に従事していた作業者が、足を踏み外して墜落したものである。

災害発生当日、作業者Aは、建物の4階付近で、鉄骨の組立て時に剥げ落ちた柱、梁等の塗装の手直し作業に従事していた。作業は、柱に取り付けられたタラップに足を掛けて行っていたが、タラップが十分な踏み面を有していなかったため、誤って足を踏み外して約7m下の3階コンクリート床面に墜落し、重傷を負った。

Aは、塗装作業中、安全帯を使用し、保護帽を着用していた。墜落制止用器具は、柱の突起部(鉄骨柱つりピース)に墜落制止用器具のフックを掛けて使用していたが、Aが足を踏み外した衝撃でフックから約20cmの箇所でロープが切断した。

墜落制止用器具はAが所有する1本つり用で、製造後6年を経過していたため、ロープが変色し、随所に焦げあとや塗料の付着があった。ロープは8本のストランドからなっていたが、うち数本はかなり以前から破断していた。この工事現場では、墜落制止用器具等の保護具の点検基準を作成しておらず、保護具の点検は作業者任せとしていた。

なお、この工事現場では、鉄骨の塗装の手直し作業は1日で終える予定であったことから、作業床を設置しておらず、また、防網等の墜落防止措置も講じていなかった。

事例1

【原因】

1)十分な踏み面を有しないタラップを足がかりとして作業を行っていたこと

2)作業床が設けられていないにもかかわらず、防網を張っていなかったこと

3)墜落制止用器具等の保護具の点検基準を作成しておらず、点検を作業者任せとしていたこと


【対策】

1)高所作業を行う際には、足場を組み立てる等により作業床を設けること

2)止むを得ず墜落制止用器具を使用して高所作業を行う場合は、作業場所の移動の際などで墜落制止用器具の使用が制限されることがあるため、防網の設置等をあわせて行うこと

3)墜落制止用器具等の保護具の点検基準を作成し、点検結果を確認すること
墜落制止用器具は、経年劣化したものや、角の鋭い鉄骨等との接触、溶接の火による損傷等により強度が低下したものを作業者に使用させないようにしなければならない。


<事例5>
鉄骨組立作業中、足を踏み外し墜落

【災害発生状況】

この災害は、2階建て店舗新築工事の鉄骨組立作業において、高さ約8mにある梁上でリップみぞ形鋼材(C形鋼材)(断面形状100×50×20mm、長さ約4m、重さ約16 kg)を運搬していた作業者が墜落したものである。

災害発生当日、工事現場には複数の作業者グループが入場し、Aを含む6名の作業者は、C形鋼およびブレースの取り付けを行うよう現場責任者Bから指示された。

Aは、移動式クレーンで梁上に荷下ろしされたC形鋼を取り付け位置まで運ぶ作業を担当していたが、作業を開始して約2時間後、C形鋼を両手で抱えて幅10cmの梁の上を歩いて運搬中、足を踏み外して墜落した。Aは、直ちに病院に搬送されたが、死亡した。

当日、別の作業者グループがBからC形鋼およびブレースの取り付けと並行して水平安全ネットを張るよう指示されていたが、Aが墜落したときは、まだ張られていなかった。Aが足を踏み外した梁の上には墜落制止用器具用の親綱が設置されており、Aは墜落制止用器具を着用していたが、フックを親綱に掛けていなかった。当該現場ではBが建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者に指名されていたが、複数の作業を同時進行させていたため、Aらが墜落制止用器具を使用している状況を確認していなかった。

また、Aは当日、初めて当該現場に入場したものであったが、Aに対し入場時安全衛生教育を実施することなく、作業に就かせた。

事例1

【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1)被災者に墜落制止用器具を使用させていなかったこと

2)水平安全ネットが、設置されない状態のまま、梁の上で運搬作業を行わせる等、作業計画が不適切であったこと

3)建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者に指名されたBが、墜落制止用器具の使用状況の監視、作業の直接指揮等、作業主任者としての職務を行っていなかったこと

4)初めて現場に入場した者に対して行うことにしている、作業方法や作業手順に関する安全衛生教育をAに実施しないまま作業に就かせたこと


【対策】

類似災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1)鉄骨組立作業においては、墜落制止用器具の使用を徹底すること

2)作業者の墜落等の危険を防止する措置を先に実施する作業計画を策定すること。
作業者が墜落する危険を防止する措置を講じた後に高所作業を開始するような作業計画を策定する。

3)建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者に次の職務を確実に行わせること
[1] 作業の方法および作業者の配置を決定し、作業を直接指揮する。
[2] 器具、工具、墜落制止用器具等および保護帽の機能を点検し、不良品を取り除く。
[3] 墜落制止用器具等および保護帽の使用状況を監視する。

4)新規入場者に対し行うことにしている安全衛生教育を実施し、墜落の危険や作業方法等を教育した上で作業に就かせること



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