1日に複数の振動工具を使ったらどう計算する?
実際の現場では、 1日中ずっと同じ振動工具だけを 使うとは限りません。
午前中に一つの振動工具を使い、 そのあと別の振動工具を使う。
そんな日には、 1日全体の振動ばく露を どう計算すればよいのでしょうか。
ここで注意したいのが、 それぞれの工具について計算したAi(8)を そのまま足すわけではない ということです。
ここでは、当協会の 「振動工具取扱作業者安全衛生教育」テキストと 厚生労働省の指針をもとに、 1日に複数の振動工具を使用した場合の 日振動ばく露量A(8) を実際に計算してみます。
まず、それぞれの工具を別々に計算する
1日に複数の振動工具を使う場合でも、 最初にすることは同じです。
個別のAi(8)は、 1種類の工具の場合と同じ式で求めます。
Ti:その工具の振動ばく露時間[時間]
2台の工具を使った例で計算してみる
例えば、 同じ日に次の2種類の振動工具を 使用したとします。
| 工具 | 3軸合成値 | 振動ばく露時間 |
|---|---|---|
| 工具A | 12m/s² | 30分 |
| 工具B | 8m/s² | 30分 |
まず、 工具Aから計算します。
12m/s² × √(0.5 ÷ 8)
次に、 工具Bを計算します。
8m/s² × √(0.5 ÷ 8)
3.0+2.0=5.0ではない
ここが今回の一番重要なところです。
工具AのA1(8)が3.0m/s²、 工具BのA2(8)が2.0m/s²だからといって、
とは計算しません。
複数の振動工具を使用した場合には、 個々のAi(8)を 二乗して合計し、 最後にその平方根を求めます。
同じ式は、 工具ごとの3軸合成値と振動ばく露時間を使って、 次のように表すこともできます。
二乗する → 合計する → 平方根をとる という順番です。
では、先ほどの2台を合計する
先ほど求めた値は、
でした。
それぞれを二乗します。
この日の 日振動ばく露量A(8)は、 約3.61m/s² となります。
3.61m/s²なら、どう判断する?
計算した1日全体のA(8)を、 日振動ばく露対策値と 日振動ばく露限界値に比べます。
| 基準 | A(8) | 今回の値 |
|---|---|---|
| 日振動ばく露対策値 | 2.5m/s² | 3.61m/s²なので 超えている |
| 日振動ばく露限界値 | 5.0m/s² | 3.61m/s²なので 超えていない |
したがって、 この例では限界値5.0m/s²以内ですが、 対策値2.5m/s²は超えています。
使用時間を短くする、 低振動の工具へ変更する、 作業を分担するなど、 振動ばく露を減らす対策に努めます。
「この工具は大丈夫」 「次の工具も大丈夫」と 一つずつ見るだけでは、 その日の合計ばく露を判断できません。
なぜ使用時間を足すだけではだめ?
先ほどの例では、 2つの工具を30分ずつ使用したので、 合計の振動ばく露時間は1時間です。
しかし、 「合計1時間だから問題ない」 とは判断できません。
同じ1時間でも、 使った工具の3軸合成値によって 振動ばく露量は変わるからです。
したがって、 「今日は振動工具を合計何分使ったか」 だけではなく、 「どの工具を何分使ったか」 を確認することが大切です。
工具が3台以上になっても考え方は同じ
1日に3種類以上の振動工具を使う場合でも、 考え方は変わりません。
工具が増えるたびに、 個別のAi(8)を求め、 その二乗を加えていきます。
一つの工具だけで5.0を超えていたら?
例えば、 ある工具だけで A1(8)が 5.0m/s²を超えていた とします。
その場合、 そこへ別の工具によるばく露を加えれば、 1日全体のA(8)も 5.0m/s²を超えることになります。
各工具のAi(8)を計算することで、 どの工具・作業が 1日の振動ばく露を大きくしているのかも分かります。
どの工具を減らすと効果が大きい?
複数の工具を使用して A(8)が高くなった場合、 すべての作業時間を同じ割合で 減らす必要はありません。
| 確認 | 考え方 |
|---|---|
| 3軸合成値が大きい工具 | 低振動工具へ変更できないか検討する |
| 使用時間が長い工具 | 作業時間を短縮・分担できないか検討する |
| 振動の大きい作業 | 別の工法や機械化ができないか検討する |
個別のAi(8)を見ると、 その日の振動ばく露に 大きく影響している作業 を見つけやすくなります。
A(8)が5.0以下なら、時間は気にしなくてよい?
ここも注意が必要です。
複数工具を合わせたA(8)が 5.0m/s²以下だからといって、 それだけで振動工具の作業時間管理が すべて終わるわけではありません。
前のページで確認したように、 厚生労働省の指針では、 振動ばく露限界時間と2時間ルール、 さらに 一連続の振動ばく露時間と休止時間 についても管理方法が示されています。
「合計A(8)が5.0以下だから、 何時間でも使える」という意味ではありません。
厚生労働省の計算テーブルなら自動で合計できる
複数の工具を使うたびに、 二乗や平方根を手計算するのは 少し面倒です。
厚生労働省では、 日振動ばく露量A(8)の計算テーブル を公開しています。
現在公開されている厚生労働省の計算テーブルでは、 振動工具1~6の6種類まで 値を入力し、 個々のA(8)と合計のA(8)を確認できます。
▶ 厚生労働省「日振動ばく露量A(8)の計算テーブル」を見る
作業前に1日分を計算してみる
複数の振動工具を使う予定がある場合には、 作業が終わってから計算するのではなく、 作業開始前に予定時間からA(8)を確認 しておくと、 作業時間を調整しやすくなります。
| 確認してみること | 確認 |
|---|---|
| その日に使う振動工具をすべて確認した | □ |
| それぞれの工具の3軸合成値を確認した | □ |
| それぞれの予定ばく露時間を確認した | □ |
| 工具ごとのAi(8)を計算した | □ |
| 個々のAi(8)の二乗和の平方根から 1日全体のA(8)を確認した | □ |
| A(8)が2.5m/s²を超える場合、 振動ばく露を減らす方法を検討した | □ |
| A(8)が5.0m/s²を超えないよう 作業計画を調整した | □ |
| 振動ばく露時間や 一連続作業時間についても確認した | □ |
「今日は工具を合計何時間使うか」だけではなく、 「どの工具を、何分ずつ使うか」まで見る。
そして、 工具ごとの振動値と使用時間を 一つずつA(8)へ置き換えてから、 その日の合計ばく露を確認する ことがポイントです。
振動工具3本を続けて確認する
振動工具の作業時間管理は、 次の3段階で考えると整理しやすくなります。
講習テキストでも確認できます
当協会の 「振動工具取扱作業者安全衛生教育」テキストでは、 1日に複数の振動工具を使用した場合について、 個々のAi(8)から 1日全体のA(8)を求める方法を解説しています。
厚生労働省の指針でも、 同一労働者が1日に複数の振動工具を使用する場合には、 個々の工具の3軸合成値と 振動ばく露時間から 1日全体のA(8)を求めることとしています。
▶ 「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」を見る
受講者様のご希望に合わせ、以下のタイプの講習会もご用意しています
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