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この振動工具、1日何分まで使える?

コンクリートブレーカーや電動ハンマー、 エンジンカッターなどの振動工具を使うとき、 「1日2時間まで」と聞いたことがあるかもしれません。

では、 どの振動工具でも、 一律に2時間使えるのでしょうか。

実際には、 工具によって振動の大きさが違うため、 1日に使用できる時間も変わります。

そこで確認するのが、 工具の表示、取扱説明書やメーカーのホームページなどに示されている 「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」 です。

ここでは、当協会の 「振動工具取扱作業者安全衛生教育」テキストと 厚生労働省の指針をもとに、 使う工具の振動値から、 1日の振動ばく露時間を考える方法 を確認してみます。

まず工具の「3軸合成値」を探す

振動工具を使う前に、 まず確認するのが 「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」 です。

名前は難しそうですが、 ここでは 「その工具から手や腕へ伝わる振動の大きさを表す値」 と考えると分かりやすくなります。

単位は m/s² で表示されます。

工具への表示
または
取扱説明書
または
メーカーのホームページ
↓
3軸合成値を確認

一般に、 3軸合成値が大きい工具ほど、 同じ時間使用したときの振動ばく露も大きくなります。

「振動工具だから2時間まで」 だけでは足りません。

まず、 実際に使用する工具の 3軸合成値を確認します。

1日の限界時間はどう計算する?

厚生労働省の指針では、 日振動ばく露限界値 A(8)=5.0m/s² に対応する 「振動ばく露限界時間」を 次の式で求めます。

振動ばく露限界時間
TL = 200 ÷ a²
TL:振動ばく露限界時間[時間]
a:3軸合成値[m/s²]

例えば、 使用する振動工具の3軸合成値が 15m/s² だったとします。

3軸合成値 15m/s²
↓
200 ÷ 15²
= 200 ÷ 225
↓
約0.89時間
= 約53分

この場合、 A(8)=5.0m/s²に対応する 振動ばく露限界時間は 約53分です。

したがって、 「振動工具は2時間まで」と考えて 2時間使用すると、 限界値を超えてしまいます。

3軸合成値が違うと、時間はこれだけ変わる

同じ計算を、 いくつかの3軸合成値で行ってみます。

3軸合成値 計算上の
振動ばく露限界時間
通常の管理で見る時間
7.5m/s² 約3時間33分 2時間以下
10m/s² 2時間 2時間以下
12m/s² 約1時間23分 約1時間23分以下
15m/s² 約53分 約53分以下
20m/s² 30分 30分以下
25m/s² 約19分 約19分以下

振動が大きくなると、 使用できる時間が急速に短くなることが分かります。

特に3軸合成値が 10m/s²を超える工具では、 計算上の振動ばく露限界時間そのものが 2時間より短くなります。

では「2時間ルール」とは何?

ここが混同しやすいところです。

厚生労働省の指針では、 計算した振動ばく露限界時間が 2時間を超える場合には、当面、 1日の振動ばく露時間を2時間以下 とすることとしています。

3軸合成値から限界時間を計算
↓
限界時間が
2時間以下
/
限界時間が
2時間を超える
↓
通常は、限界時間と2時間を見て作業時間を決める

例えば、 3軸合成値が7.5m/s²の場合、 計算上の振動ばく露限界時間は 約3時間33分です。

しかし通常の管理では、 「3時間33分使ってよい」とはせず、 1日の振動ばく露時間を2時間以下 とします。

「2時間」は、どんな工具でも使える時間ではありません。

計算した振動ばく露限界時間が 2時間より短ければ、 その短い時間を超えないようにします。

一定の条件を満たせば2時間を超える場合もある

厚生労働省の指針には、 2時間以下とする取扱いの 例外も示されています。

振動工具について、 製造者または輸入者が示した方法で 適切に点検・整備を行うとともに、 使用する個々の工具の3軸合成値を 点検・整備の前後を含めて測定・算出し、 その最大値に対応する振動ばく露限界時間で 管理する場合です。

この条件を満たす場合は、 「限界時間が2時間を超えたら2時間以下」 という取扱いの例外となります。

ただし、その場合でも、 1日の振動ばく露時間は 4時間以下とすることが望ましい とされています。

カタログ値を見ただけで「4時間まで」にはなりません

この例外には、 工具ごとの振動値の測定・算出や 適切な点検・整備などの条件があります。
通常はまず、 計算した限界時間と2時間を基準に 作業を計画します。

「振動ばく露時間」は勤務時間ではない

ここでいう振動ばく露時間は、 朝から夕方までの勤務時間そのものではありません。

実際に振動工具を使用して、 手や腕が工具の振動にさらされている時間 を考えます。

例えば、 8時間の勤務中に 同じ振動工具を10分ずつ6回使用した場合、 振動ばく露時間は 合計60分として考えます。

勤務時間 8時間
↓
振動工具を
10分 × 6回使用
↓
振動ばく露時間 60分

したがって、 作業計画を立てるときには、 「何時から何時まで作業するか」だけではなく、 実際に振動へばく露される時間を合計 して管理します。

1日の合計時間以内なら、連続して使ってよい?

これも別に考える必要があります。

1日の振動ばく露時間が限界以内であっても、 長時間連続して工具を使い続けることは避けます。

厚生労働省の指針では、 対象業務に応じて 一連続の振動ばく露時間 についても目安を示しています。

対象となる業務 一連続の目安
ピストンによる打撃機構を有する工具を使う業務のうち、 金属・岩石のはつり、かしめ、切断、 鋲打ち、削孔 おおむね10分以内
その後5分以上休止
エンジンカッター等の可搬式内燃機関工具、 回転工具、振動体内蔵工具、 一定の研削盤、締付工具、往復動工具など 指針1(2)~(8)の業務 おおむね30分以内
その後5分以上休止

また、 工具を強く握ったり、 強く押さえたりする必要がある作業では、 一連続の振動ばく露時間をさらに短くし、 休止時間を長くすることとされています。

つまり、 「今日は合計53分までだから、 53分連続で使う」 という考え方にはなりません。

1日の合計時間と 一連続の作業時間の 両方を確認します。

3軸合成値が分からなかったら?

古い工具などでは、 表示や取扱説明書を見ても 3軸合成値が確認できない場合があります。

その場合、 厚生労働省の指針では、 類似する振動工具の3軸合成値を参考にして 振動ばく露限界時間を算出します。

その計算結果が2時間を超える場合でも、 1日の振動ばく露時間は 2時間以下のできる限り短時間 とします。

「振動値が分からないから、とりあえず2時間」 ではありません。

まず表示、取扱説明書、メーカー資料等を確認し、 分からない場合には 類似工具の値を参考にして限界時間を求めます。

低振動の工具を選ぶと、ばく露を減らせる

作業時間を短くすることだけが 対策ではありません。

3軸合成値の小さい工具へ変更すれば、 同じ作業時間でも 日振動ばく露量を小さくできます。

振動の大きい工具
↓
低振動の工具へ変更
↓
振動ばく露を低減

また、 振動工具は製造者等が示した時期と方法により 定期的に点検・整備し、 常に良好な状態に保つ ことも重要です。

作業前に計算してみる

振動工具を使う予定がある日は、 作業を始める前に確認してみます。

確認してみること 確認
使用する工具の3軸合成値を確認した □
振動ばく露限界時間を計算した □
限界時間が2時間を超える場合の 2時間ルールを確認した □
1日の振動ばく露時間を決めた □
一連続の作業時間と休止時間を確認した □
工具の点検・整備状況を確認した □

「振動工具は何時間まで?」ではなく、 「この工具の振動値なら、今日は何分まで?」 と考える。

そのための最初の数字が、 工具に表示されている 3軸合成値です。

次はA(8)を実際に計算してみる

このページでは、 日振動ばく露限界値5.0m/s²から 「何分まで使えるか」を計算しました。

次は、 実際の工具の3軸合成値と 使用予定時間から、 日振動ばく露量A(8) そのものを計算してみます。

▶ カタログの「3軸合成値」からA(8)を計算してみる

講習テキストでも確認できます

当協会の 「振動工具取扱作業者安全衛生教育」テキストでは、 3軸合成値、 日振動ばく露量A(8)、 日振動ばく露限界値、 振動ばく露時間の管理について解説しています。

▶ 振動障害の予防措置・A(8)を見る

▶ 振動工具の振動値・A(8)の資料を見る

厚生労働省では、 振動障害対策の指針や A(8)の計算テーブルを公開しています。

▶ 厚生労働省「振動障害対策」を見る

▶ 「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」を見る


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