一人親方にも関係する? 対象となる場面を整理してみる
「個人事業者等への安全衛生対策が強化された」 と聞いても、 一人親方として働いている人にとっては、 「自分のどの仕事に関係するのか」 が分かりにくいかもしれません。
例えば、 元請の現場へ一人親方として入る場合。
自分一人だけで請け負った作業をする場合。
別の会社の労働者と 同じ場所で作業する場合。
同じ「一人親方」でも、 作業する場所や周囲で働く人、 仕事の請け負い方によって 関係する措置は変わります。
ここでは、 厚生労働省の個人事業者等に関する資料をもとに、 建設現場でよくある場面に置き換えて 整理してみます。
最初に見るのは「一人親方かどうか」だけではない
制度を確認するとき、 最初に 「自分は一人親方だから対象だ」 「個人事業者だから対象外だ」 と決めるのではありません。
まず見るのは、 どのような場所で、 誰と一緒に、 どのような作業をしているのか です。
一人親方・個人事業者等
仕事の内容、作業場所、 周囲で作業する人との関係まで見て確認します。
場面① 元請の建設現場へ一人親方として入る
まず分かりやすいのが、 一人親方が元請の管理する建設現場へ入り、 他の会社の労働者などと一緒に作業する場合です。
建設現場では、 複数の事業者や一人親方が 同時に作業することがあります。
このような場合には、 自分の作業だけでなく、 他の人が行っている作業によって生じる危険 も考える必要があります。
| 現場で確認すること | 例 |
|---|---|
| 作業間の連絡調整 | どこで、誰が、何の作業をするのか |
| 立入禁止区域 | 重機作業、揚重作業、解体作業などの周辺 |
| 退避 | 事故等が発生した場合に、 どこへ退避するのか |
| 現場の措置 | 通路、立入禁止、合図、 作業間の連絡調整など |
令和8年(2026年)4月からは、 建設業等の元方事業者が行う統括管理の対象にも 個人事業者等が明確に含まれています。
一人親方についても、 元方事業者が講じる措置に応じて 必要な措置を講じます。
同じ建設現場で作業する一人親方などについても、 混在作業による災害を防ぐための仕組みの中に 位置づけられています。
場面② 危険・有害な作業を一人親方が請け負う
次は、 事業者から 危険・有害な作業の一部を 一人親方が請け負う場合です。
ここで重要なのは、 仕事を請け負わせた事業者の労働者が その場で一緒に作業していなくても、 関係する保護措置がある ということです。
令和5年(2023年)4月からは、 危険有害作業の一部を 一人親方等へ請け負わせる場合、 作業方法や保護具の使用などについて 一定の措置を講じることが 事業者に義務付けられています。
つまり、 「その場所に注文者側の労働者がいるか」 だけを見ればよいわけではありません。
誰がその仕事を請け負わせたのか、 どの危険・有害作業に該当するのかも確認します。
場面③ 自分は別の仕事でも、同じ危険な場所にいる
自分自身が その危険・有害作業をしていなくても、 関係する場合があります。
例えば、 ある事業者が危険・有害な作業をしている場所へ、 一人親方が別の仕事で入っている場合です。
同じ作業場所にいる労働者以外の人については、 請負契約の有無を問わず 一定の保護措置の対象となります。
| 同じ作業場所にいる人 | 例 |
|---|---|
| 一人親方 | その事業者とは別の作業を行っている |
| 他社の労働者 | 危険作業を行う事業者と 直接の請負関係がない |
| 資材搬入業者 | その場所へ資材を搬入する |
| 警備員など | 別の業務で同じ作業場所にいる |
ポイントは、 「誰と契約しているか」だけではなく、 実際にその危険が及ぶ作業場所にいるか です。
他の人の作業によって生じる危険に 自分がさらされる場合があります。
「同じ現場」なら、全部が同じ作業場所?
ここで注意したいのが、 「同じ工事現場」と、 保護措置の対象となる「作業場所の範囲」を 単純に同じものとして考えない ことです。
一つの大きな建設現場でも、 作業場所や 危険が直接及ぶ範囲は異なります。
例えば、 建物の反対側で行われている作業と、 自分のすぐ横で行われている作業では、 受ける影響も異なります。
厚生労働省の通達では、 立入禁止等の措置が及ぶ場所について、 その業務や作業の影響が直接的に及ぶと考えられる 合理的な範囲 としています。
したがって、 「現場名が同じか」だけでなく、 実際の作業場所と危険の及ぶ範囲 を確認します。
場面④ 一人親方が自分の機械を持ち込む
一人親方が、 自分で所有・管理している機械を 現場へ持ち込んで作業することもあります。
令和9年(2027年)4月1日からは、 労働者と同じ場所で作業する個人事業者等 について、 機械等に関する義務も加わります。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 機械等の構造・安全装置 | 構造規格や必要な安全装置を 備えていない機械等を使用しない |
| 定期自主検査等 | 対象となる機械等について 必要な定期自主検査等を行う |
例えば、 車両系建設機械や移動式クレーン等には、 定期自主検査等が必要なものがあります。
「自分の機械だから自由に使える」 ということではなく、 法令上必要となる構造、安全装置、検査等を確認 します。
場面⑤ 特別教育が必要な作業を一人親方が行う
建設現場には、 特別教育が必要となる 危険・有害な業務があります。
例えば、 フルハーネス型墜落制止用器具を使用する一定の業務、 低圧電気取扱業務、 研削といしの取替え等の業務などです。
労働者の場合には、 その労働者を使用する事業者に 特別教育を行う義務があります。
令和9年(2027年)4月1日からは、 労働者と同じ場所で 危険・有害な業務を行う個人事業者等自身にも、 対象となる特別教育を受講する義務 が課されます。
現在すでに、
この新しい受講義務が
すべての個人事業者等へ施行されている、
という意味ではありません。
施行時期と対象となる作業を分けて確認します。
場面⑥ 完全に一人で、自分だけの作業場所で仕事をする
では、 自分一人だけで仕事をしていて、 同じ場所に労働者がいない場合はどうでしょうか。
令和9年(2027年)4月からの 個人事業者等自身への 機械等の使用、定期自主検査、 特別教育などの新しい義務は、 「労働者と同じ場所で作業を行う個人事業者等」 を対象としています。
そのため、 完全に一人で作業している場合まで、 これらの新しい義務が すべて同じように適用されるわけではありません。
ただし、 ここで 「一人なら労働安全衛生法とは一切関係がない」 と判断するのも適切ではありません。
危険・有害な仕事を 他の事業者から請け負っている場合には、 その仕事を請け負わせた事業者に 一人親方等への保護措置が求められる場合があります。
つまり、 一人で作業しているかどうかだけではなく、 どの規定について確認しているのか を分けて考える必要があります。
仕事を誰から請け負ったのか、 どのような危険・有害作業なのか、 どの規定が関係するのかまで確認します。
場面⑦ 現場に作業者として入る中小事業の社長・役員
「個人事業者等」という言葉から、 一人親方やフリーランスだけを 想像しがちです。
しかし、 今回の安全衛生対策では、 中小事業の事業主や役員についても、 「個人事業者等」として 保護・規制の対象となる措置があります。
例えば、 会社の代表者自身が現場へ入り、 労働者と同じ場所で作業を行うような場合です。
「法人の役員だから関係ない」 と単純には判断できません。
場面ごとに並べるとこうなる
| 場面 | まず確認すること |
|---|---|
| 元請現場で他社の労働者等と作業 | 統括管理、 作業間の連絡調整、 立入禁止・退避等 |
| 危険・有害な仕事を請け負う | 請負人に対する保護措置の対象となる作業か |
| 別の人が行う危険作業と同じ場所にいる | その作業場所にいる人への 立入禁止・退避等の保護措置 |
| 自分の機械を持ち込む | 構造規格、安全装置、 定期自主検査等 |
| 危険・有害業務を行う | 特別教育の対象業務か |
| 完全に一人で作業 | 誰から何の仕事を請け負ったか、 どの規定が関係するか |
| 中小事業の社長・役員自身が現場作業 | 個人事業者等を対象とする措置が関係するか |
現場へ入る前に確認してみる
| 確認してみること | 確認 |
|---|---|
| 自分が一人親方・個人事業者等に当たるか確認した | □ |
| 同じ作業場所に労働者や他の作業者がいるか確認した | □ |
| 周囲で行われる作業から受ける危険を確認した | □ |
| 立入禁止・退避・連絡調整など 現場の措置を確認した | □ |
| 自分が使用する機械に必要な 安全装置や検査を確認した | □ |
| 自分が行う仕事に 特別教育の対象となる業務があるか確認した | □ |
| 現在すでに施行されている措置か、 今後施行される措置か確認した | □ |
「一人親方だから対象か?」ではなく、 「この場所で、この作業をする自分には何が関係するか?」 と考える。
そうすると、 個人事業者等への安全衛生対策が 自分の仕事にどう関係するのか、 整理しやすくなります。
公的資料でも確認できます
厚生労働省では、 個人事業者等への安全衛生対策について、 すでに施行されている保護措置と、 改正労働安全衛生法によって 今後施行される措置をまとめて公開しています。
建設現場で複数の事業者が作業する場合の 統括管理や作業間の連絡調整については、 当協会の職長・安全衛生責任者教育テキストでも確認できます。
受講者様のご希望に合わせ、以下のタイプの講習会もご用意しています
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