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10-2 創意工夫を効果的に進める具体的方法


どのような場で意見を出してもらったり、物事を考えたり、そのきっかけを作ってもらったりするのか、以下具体的手法の例を示します。

職長は、これらの手法を状況に合わせて実施して作業者の関心を高め、作業者が安全活動に積極的に参加し興味を持てるように心がけます。

(1)危険予知活動で創意工夫力を磨く

危険予知(KY)活動は、作業に潜む主に行動災害につながる危険を事前に見つけ出して、その対策を講じていく活動ですが、問題点の把握や対策案を考える過程で創意工夫能力の向上が期待されます。

(2)安全ミーティングによる動機付け

その日の作業開始前の安全ミーティング時に、個々の作業者が作業方法や安全に対して気がついた事項を気軽に話し合える場を設けることによって、作業方法や内容が改善されるヒントやきっかけが生まれる機会を作ります。

このように作業者同士が安全に対する改善を話し合うようにすれば、安全への関心を高めることができ、災害防止にも大いに効果を上げることが期待できます。

安全ミーティング

  • 手際よく(5分~10分)
  • 月間や当日の目標を確認して
  • 手順書や元請けからの指示書を活用し
  • 本音で話し合う

(3)提案制度

作業者から新しいやり方や改善案を出してもらい、採用した提案の効果が大きければ褒賞を与えるという制度で、従来広く使われている創意工夫を引き出す方法です。


提案制度の効果

①考える習慣が作られる

②問題意識が向上する

③仕事に対して主体的になる

④上司と部下の対話が促進される


また、人間関係の効果として次の事が期待できます。

①横(作業者同士)のコミュニケーションが拡大される

②職場内の協力が促進され、活性化する

(4)ブレイン・ストーミング

ブレイン・ストーミングとは、テーマを決め集団でアイデアを出し合うことによって相互の連鎖反応や発想の誘発を期待する技法です。

短時間のうちに1つのテーマや問題点について検討し、多くの創意工夫やアイデアを引き出し、それらを組み合わせたりして、問題点を改善して効果を上げていきます。ブレイン・ストーミング実施の際は、次の4原則を守ることが必要とされています。

ブレイン・ストーミング 4つのルール

① 結論厳禁(判断・結論を出さない)

自由なアイデア抽出を制限するような判断、結論は慎むこと。ただし可能性を広く抽出するための質問や意見ならば、その場で自由にぶつけあう。例えば「予算が足りない」と否定するのは望ましくないが、「予算が足りないがどう対応するのか」と可能性を広げる発言に置き換えるとよい。

② 自由奔放(粗野な考えを歓迎する)

だれもが思いつきそうなアイデアよりも、奇抜な考え方やユニークで斬新なアイデアを重視する。

③ 質より量(量を重視する)

さまざまな角度から多くのアイデアを出す。一般的な考え方、アイデアはもちろん一般的でなく新規性のある考え方、アイデアまであらゆる提案を歓迎し、なんでもいいのでどんどん発言する。

④ 結合改善(アイデアを結合し発展させる)

別々のアイデアをくっつけたり一部を変化させたりすることで、新たなアイデアを生み出していくことである。他人の意見に便乗することが推奨される。

(5)ヒヤリ・ハット体験を知恵に変える

各々の作業者が経験したヒヤリ・ハットを報告させ、全員で問題点を洗い出して具体的な対策を考え実行していくことは、それが現場の第一線の実体験であるだけに共感も呼びやすく、事故・災害の防止に非常に有効です。職長は一連のヒヤリハットに関する情報収集を積極的に行うことが望まれます。

なお、作業者が定められた作業手順書に沿って作業を行わなかったことや、自らの不安全行動が原因でヒヤリ・ハットにつながった場合なども数多くあると考えられ、こうした場合作業者は責められることを懸念して報告をしないことも予測されるため、「いかなる原因であったとしても決して報告者を責めない」ことを基本ルールとして浸透させる必要があります。

ヒヤリハット活動フロー

【ハインリッヒの法則】

「同じ人間が起こした330件の災害のうち、1件は重い災害(死亡や手足の切断等の大事故のみではない。)があったとすると、29回の軽傷(応急手当だけですむかすり傷)、傷害のない事故(傷害や物損の可能性があるもの)を300回起こしている。」というもので、300回の無傷害事故の背後には数千の不安全行動や不安全状態があることも指摘しています。また、ハインリッヒは、この比率について、鉄骨の組立と事務員では自ずから異なっているとも言っていますが、比率の数字そのものではなく、事故と災害の関係を示す法則としては、現在も十分に活用できる考え方です。


同様の研究としては、バードの事故比率があり、297社の175万件の事故報告を分析して、1(重傷又は廃失):10(傷害):30(物損のみ):600(傷害も物損もない事故)の比率を導き出しています。


これらの研究成果は、比率の数字にとらわれるのではなく、災害という目に見える事象の背景には危険有害要因が数多く存在しており、災害防止のためには災害に至らなかったヒヤリハット等の情報をできるだけ把握し、迅速、的確にその対応策を講ずる必要があるということを示しています。



10-3 創意工夫を引き出すための実践心がまえ

職長は、創意工夫を引き出す手法を積極的に活用して、作業の方法や機械・設備・保護具、作業環境などを改善し、災害を防止するとともに安全に対する意識高揚に努めます。

また、作業者から提案された創意工夫は積極的に活用するよう努めることが大切ですが、その中には採用されないものもあります。職長は提案者に対するフォローとして、採用されなかった理由を十分説明し、今後の意欲を高めるように心掛けます。

「創意工夫」~職長の5つの心掛け

 

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