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1-3 職長・安全衛生責任者の役割と職務

(1)職長の役割と職務

①職長とは

一般的な意味としては「職場の長」や「作業グループのリーダー」です。

安衛法では「労働者を直接指導監督する者」の例として「職長等」と表現しています。職長は、法律上選任しなければならない職ではなく、業務を遂行するため任意に事業者が選任している職です。

また、一定業種(建設業・製造業他計6業種)の新たに選任することとなった職長に対しては、安衛法第60条により「職長教育(12時間)」の実施が義務付けられています。

なお、このうち建設業については職長が安全衛生責任者を兼務することが多いため、「職長・安全衛生責任者教育(14時間)」として実施するよう通達で示されています。


②職長の役割

職長は、建設現場における業務遂行の直接の責任者であり、部下を持つ統率者、そして災害防止のリーダーでもあります。

職責を果たすための重要なポイントとして以下の点が挙げられます。

(4)起因物別墜落死傷災害発生状況(平成29年データ)

イ. Safety :安全衛生管理(より安全に)
ロ. Quality :品質管理(より良く・よりいいものを)
ハ. Delivery :工程管理(より早く・より効率的に)
ニ. Cost :原価管理(より安く)
ホ. Environment :環境管理(作業環境管理、建設副産物の適正処理等)
へ. Man :人間関係管理(働きやすい職場づくり)

職長

③職長の職務

職長は事業者が任意に選任しますので、当然その職務内容や職務権限も各事業者によって異なりますが、安全衛生の面では職長教育の科目として以下の項目があります。


表4

職長の職務(職長教育の科目)  
項 目 内 容
1 作業手順を正しく定める 安全、効率良く作業が出来るように作業の手順と急所を定め、定期に見直しを行うこと。
2 作業方法を改善する 常に問題意識を持ち、問題を見つけたら改善をすること。
3 作業員を適正に配置する 作業の条件、内容に対し、部下の労働能力、知識、経験、体力、資格等を生かし、仕事が最も順調に進むように作業割り当てをすること。
4 作業者に対して教育・指導を行う 安全で、正しい作業を行えるように、必要な知識、技能を身につけさせ、やる気を起こさせるように教育・指導を行うこと。
5 作業者に対して監督・指示をする 作業開始を指示し、作業中は指示どおりに作業が行われているかを監視するとともに、不安全行動を発見したときは是正指導をすること。
6 危険性及び有害性を調査し、対策を実施する 事前に、使用する機械設備や作業方法等の危険性又は有害性を調査し、その結果にもとづき改善措置を決定し作業計画、作業手順を定める。
7 環境の改善・保持に努める 常に4Sを心がけ、快適な環境で作業が行えるように作業環境改善を行い、作業者の健康管理と職業性疾病対策を行うこと。
8 安全衛生点検を繰り返し実施する 機械設備、環境等については、始業前、定期に点検を実施し基準からはずれた「異常な状態」を早期に発見して是正すること。
9 異常時の措置は適切に行う 現場の異常事態を早期に発見し適切な措置をとるとともに、同種・類似の異常が発生しないように再発防止対策を講じること。
10 災害発生時の措置は適切に行う 災害発生時は、まず被災者を救出し、二次災害防止の措置を講じた後、同種災害防止のため、災害調査及び原因分析を行い安全対策を講じること。
11 作業者の安全意識の高揚に努める 労働災害の防止を図るためには、作業者全員が労働災害防止についての安全意識を高めるための安全活動を計画・継続的に行うこと。
12 創意工夫を引き出す ヒヤリハット報告、改善提案制度といった諸活動をとおして、作業者から作業方法、作業環境改善等の提案や工夫を引き出すこと。


(2)安全衛生責任者の選任と職務

① 安全衛生責任者の選任

一定規模の建設現場では元方事業者は「統括安全衛生責任者」を選任し、関係請負人は「安全衛生責任者」を選任してその旨を元方事業者に遅滞なく報告したうえで、各々定められた職務を行わなければなりません(安衛法第15~16条)。 

選任する際、特に資格についての条件はありませんが、職長・安全衛生責任者教育の実施が求められています。

(「建設業における安全衛生責任者に対する安全衛生教育の推進について」
  平成12年3月28日付 基発第179号)


安衛法

(統括安全衛生責任者)

第十五条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。

2 統括安全衛生責任者は、当該場所においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければならない。

(以下省略)

安衛法

(安全衛生責任者)

第十六条 第十五条第一項又は第三項の場合において、これらの規定により統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、当該仕事を自ら行うものは、安全衛生責任者を選任し、その者に統括安全衛生責任者との連絡その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

2 前項の規定により安全衛生責任者を選任した請負人は、同項の事業者に対し、遅滞なく、その旨を通報しなければならない。

なお、上記以外の小規模の混在作業現場においても、特定元方事業者は統括管理の必要があり(安衛法第30条)、関係請負人はその現場の監督者等に対して安全衛生責任者と同様の職務を行わせるよう配慮が必要です。

特定元方事業者は、小規模の混在作業現場でも、混在作業によって生ずる労働災害を防止するため、必要な措置を講じなければなりません。(安衛法第30条)

安衛法

(特定元方事業者等の講ずべき措置)

第三十条 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない。

一 協議組織の設置及び運営を行うこと。

二 作業間の連絡及び調整を行うこと。

三 作業場所を巡視すること。

四 関係請負人が行う労働者の安全又は衛生のための教育に対する指導及び援助を行うこと。

五 仕事を行う場所が仕事ごとに異なることを常態とする業種で、厚生労働省令で定めるものに属する事業を行う特定元方事業者にあつては、仕事の工程に関する計画及び作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成するとともに、当該機械、設備等を使用する作業に関し関係請負人がこの法律又はこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導を行うこと。

六 前各号に掲げるもののほか、当該労働災害を防止するため必要な事項

安衛則

特定元方事業者等に関する特別規制の例

(協議組織の設置及び運営)

第六百三十五条 特定元方事業者(法第十五条第一項の特定元方事業者をいう。以下同じ。)は、法第三十条第一項第一号の協議組織の設置及び運営については、次に定めるところによらなければならない。

一 特定元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置すること。

二 当該協議組織の会議を定期的に開催すること。

2 関係請負人は、前項の規定により特定元方事業者が設置する協議組織に参加しなければならない。

(作業間の連絡及び調整)

第六百三十六条 特定元方事業者は、法第三十条第一項第二号の作業間の連絡及び調整については、随時、特定元方事業者と関係請負人との間及び関係請負人相互間における連絡及び調整を行なわなければならない。

(作業場所の巡視)

第六百三十七条 特定元方事業者は、法第三十条第一項第三号の規定による巡視については、毎作業日に少なくとも一回、これを行なわなければならない。

2 関係請負人は、前項の規定により特定元方事業者が行なう巡視を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。

これらの特定元方事業者が混在作業現場で講ずべき措置については、安衛則第634条の2以降の「特定元方事業者等に関する特別規制」の中に、関連した内容がより具体的に示されてますので、安全衛生責任者としても知っておく必要があります。

② 安全衛生責任者の職務

安全衛生責任者の職務内容は、労働安全衛生規則に以下のとおり定められています。


安全衛生責任者の職務

安全衛生責任者は「統括管理」を進めていく際の関係請負人側の担当者で、その職務は主に連絡調整であり、職長のように部下に対する指揮命令などは規定されていません。「安全衛生責任者」という職名から自社の作業に関する全ての安全衛生の責任者と誤解されがちですが、法律上は「混在作業によって生ずる労働災害の防止」の範囲を対象とした職です。


③安全衛生責任者の心構え

事業者(自社)単独の現場では、労働災害防止の対象は所属の労働者に限られますが、混在作業現場では職種や所属の異なる労働者が同じ場所で作業を進めるわけですから、危険の種類や度合いも大きく違うことが想定されます。

安全衛生責任者はそういった混在作業による労働災害を防止するために選任される職であることを自覚し、法令で規定された職務を遂行するとともに、以下の点にも留意・実践することが望まれます。

イ.他社に影響を及ぼすおそれのある作業を把握し、連絡調整等により災害防止に努めること

ロ.周囲の作業状況を把握し、「もらい事故」等を防ぐための対策を講ずること

ハ.現場ごとに混在作業によって生ずる災害の種類を想定しておくこと

ニ.他の安全衛生責任者との情報交換に努めること

ホ.統括安全衛生責任者(元請)からの連絡、指示事項が遵守されているかどうか必ず確認すること

へ.後次の請負人の安全衛生責任者との連絡調整、助言・指導に努めること

(3)職長と安全衛生責任者

職長と安全衛生責任者を比較すると、下図のようになります。

職長と安全衛生責任者の比較

※ 安全衛生責任者は作業者を直接指揮監督する職ではなく、主な職務は統括管理のための連絡調整になってます。

  職長は現場監督者として、作業者の指揮監督等を通じて業務を遂行し、現場の安全衛生管理全般について職務上の責任も負います。

 

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