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【第1章】第2節 足場の材料、構造及び組立図⑤

5 低層住宅用工事用足場

(1)低層住宅建築工事における労働災害防止を図るため、建方作業に先行して足場を設置する足場先行工法の具体的な進め方や足場設置基準等を明らかにした「足場先行工法に関するガイドライン」が平成8年に厚生労働省で策定され、これに基づき足場先行工法の普及が図られてきました。

これ以降、低層住宅建築工事の墜落災害による死亡災害は、減少傾向にあるもののなお一層の建方作業時における災害防止対策の一層の推進を図るため、平成18年2月に足場の組上げ方法や足場の設置に係わる事項等に関してガイドラインが一部改正されました。

また、足場からの墜落等の防止を強化した労働安全衛生規則の一部改正が平成21年6月1日から施行されたので、改正された労働安全衛生規則の基準に達しないガイドラインの規定については、改正された規則に定める基準の内容に引き上げて運用されます。

低層住宅用工事用足場

(2)ガイドラインの主な改正事項(平成18年2月改正)

①足場の組上げ方法において、建築物の全周にわたり足場を組み上げることが困難なことから、必要最小限足場の一部分を開放する場合、当該部分からの墜落を防止するため、階ごとの建方作業が終了した後順次、速やかに当該部分の足場を設けるよう変更されました。

②無理な作業姿勢による危険を防止するため、工程の進展に伴い必要に応じ作業床の高さを変更することが追加された。

③悪天候又は足場の組立て若しくは一部変更の後に、足場に異常がないか点検を実施し、異常を認めたときは速やかに補修することが追加された。


(3)ガイドラインが適用される工事

本ガイドラインは、軒の高さ10m未満の住宅等の建築物(現場打設の鉄筋コンクリート構造の建築物を除く。)の建設工事に適用されます。

したがって、軸組工法のほか、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)、軽量鉄骨構造、軽量コンクリート(ALC)構造、プレキャストコンクリート構造でも、軒の高さが10m未満の工事ではこのガイドラインに沿って、作業を進めてください。

低層住宅用工事用足場

(4)足場の種類

足場は、二側足場とする。ただし、敷地が狭あいな場合等二側足場の設置が困難な場合には、ブラケット一側足場等とすることができます。

足場は、全周を完全に組み上げる。ただし、建方作業のため、全周にわたって完全に組み上げることが困難な場合には、必要最小限において一部開放の構造とすることができます。

この場合、一部開放した部分については、階ごとの建方作業が終了した後、順次、速やかに当該部分の足場を組み上げます。


(5)「足場先行工法」とは、建方作業開始前に足場を設置して、工事を施工する工法をいいます。


低層住宅用工事用足場

①「建方作業」とは、柱、梁、桁等の構造部材の組立てと小屋梁、小屋つか、母屋、棟木及びたる木の取付けに係る作業をいいます。

②「二側足場」とは、建地に前踏み(建物に近い内側の建地)と後踏み(外側の建地)がある単管足場のうち、住宅等の建築工事に用いる足場をいいます。

③「ブラケット一側足場」とは、建地にブラケット(持送り枠)を取り付けている一側足場をいいます。


(6)作業に当たっての留意事項

①職別工事業者は工務店等との連絡調整、工事現場の巡視を行う。また、工務店等は、工事現場を巡視し、足場の設置状況等工事現場の安全衛生管理状況の点検を実施する。

②高さ5m以上の足場の組立て、軒の高さが5m以上の木造建築物の構造部材の組立て等に係る作業主任者を選任し、直接指揮を徹底する。

・移動式クレーンの運転、玉掛け等の資格を要する作業については、有資格者により適正な方法による作業の実施を徹底する。

③高所作業に従事する労働者に対しては、墜落による危険を防止するための保護帽を着用させる。

④工務店等は新規入場者教育の推進に努めるとともに、職別工事業者は労働者に対する継続的な安全教育を実施する。

・工務店等は作業主任者等に、足場先行工法に係る講習会、研修等を積極的に受講させる。


(7)外壁と作業床の間隔及び墜落防止措置

①建方作業及び外壁施工前

足場からの墜落を防止するため、足場は建築物の外壁位置と足場の作業床の端とができるだけ接近した位置となるように設け、足場には手すり及び中さんを設ける。前踏み側の手すり及び中さんを設けることが困難な場合には労働者に墜落制止用器具を使用させる。


②外壁施工後

建築物と足場の作業床との間隔は、30cm以下。30cm以下とすることが困難な場合には、足場に前手すりを設ける。前手すりを設けることが困難な場合には、ネットを設け又は労働者に墜落制止用器具を使用させる等、墜落防止のための措置を講じる。


(8)設置時期

足場は、基礎工事、埋め戻し及び地ならしが終了した後、建方作業を開始する前に設置します。


(9)足場の組立て

①足場を組み立てる前に、部材の著しい損傷、変形、腐食等の有無を確認し、異常がある場合には適正なものに交換します。

②足場計画等に基づき、作業の方法、作業手順等を確認しながら組み立てます。

③足場の倒壊防止のため、仮り付けの控え等を設けながら組み立てます。

④移動式クレーンの位置及び建物の形状を図面で確認し、足場が建築物に接触したり、クレーン作業で邪魔にならないように組立てます。


(10)足場の変更

①工程の進展に伴う建物の形状の変化に合わせ、下屋上やバルコニー上の足場の設置等を速やかに行います。作業床は、作業姿勢に適した高さとなるよう、必要に応じ、変更します。

②作業の都合上、足場の一部を変更する場合には、足場を使用する労働者の安全を確保するとともに、作業終了後は必ず復元を行います。復元が困難な場合には、速やかに当該工事を施工する工務店、足場設置業者等に連絡します。


低層住宅用工事用足場

(11)足場の点検

その日の作業を開始する前に、作業を行う箇所に設けた手すり、中さん及び幅木等の取りはずし及び脱落の有無について点検を実施し、異常を認めたときは直ちに補修を行います。

強風、大雨、大雪等の悪天候若しくは中震以上の地震又は足場の組立て、一部解体若しくは変更の後において、足場に異常がないか、以下について点検を実施し、異常を認めたときは直ちに補修を行います。


また、これらの点検については、その点検事項を記録し足場を使用する作業が終了するまでの間保存することとします。

①床材の損傷、取付け及び掛け渡しの状態

②建地、布、腕木等の緊結部、接続部及び取付部のゆるみの状態

③緊結材及び緊結金具の損傷及び腐食の状態

④手すり及び中さんの取りはずし及び脱落の有無

⑤幅木等の取付状態及び取りはずしの有無

⑥脚部の沈下及び滑動の状態

⑦筋かい、控え、壁つなぎ等の補強材の取付状態及び取りはずしの有無

⑧建地、布及び腕木の損傷の有無


 

足場先行工法に関するガイドラインによる足場の構造上の主なものの概略

区分 取り付け位置、取り付け寸法
屋根からの墜落防止 屋根勾配が6/10以上である場合又はすべりやすい材料の屋根下地の場合には、20cm以上の幅の作業床を2m以下の間隔で設置。
軒先からの墜落防止 ①足場の建地を屋根の軒先の上に突き出し、その建地に手すりを設置。その手すりは、軒先から85cm以上の高さに設け、かつ、高さ35cm以上で50cm以下に中さんを設ける。
② 軒先と建地との間隔は、30cm以下。
※軒先からの墜落防止として①および②に加えて、軒先の高さに滑り止め用の布材を設置する等の工夫例が多くなっています。
シート等 ①足場先行工法においては、建方作業後壁つなぎ等による足場の補強が完了するまで、原則として、シート等を設置してはならない。建方作業前にシートを設置せざるを得ない場合は、風荷重等により足場が倒壊することのないよう、十分補強した上で設置。
② 建方作業後
・屋根及び足場の作業床等からの材料、工具等の飛来落下による災害を防止するため、シート等を設置することが望ましい。
・シートの自重及び風荷重を考慮して足場を十分に補強。
・足場の建地、布等の間隔に応じた寸法のものを使用。
・すべてのハトメで容易に外れないよう足場に緊結。
手すり等の取付け位置 ①手すりの高さは、85cm以上。
②中さんの位置は、高さ35cm以上で50cm以下。
幅木 物体の落下防止措置として、高さ10cm以上の幅木又はメッシュシート等を設置する。
布の間隔 布の間隔は、2m以下。
地上第一の布 地上第一の布は、2m以下の位置に設置。ただし、建地を二本組にした足場及び隣接する面が緊結されている構造の足場は、2.3m以下の位置に設置。
壁つなぎ又は控え ①建方作業前に各面に控えを設置。ただし、敷地が狭あいで控えを設けることが困難な場合には全周を緊結。
②建方作業後に各面に控えを設けた足場以外の足場にあっては、足場の全周を完全に組み上げ、各面を相互に緊結するとともに、速やかに各面に壁つなぎを設置。
③建築物の構造等により壁つなぎを設けることが困難な場合には、火打ち及び圧縮材等を設け、かつ、足場の一面の長さが長い場合には頭つなぎを設けて足場を補強。
筋かい 各面に概ね45度の傾きの筋かいを全層及び全スパンにわたって設置。
根がらみ ①根がらみは、できる限り低い位置に設置。
②根がらみをはずした開口部等がある場合には、筋かい等で補強。
作業床 作業床の幅は、40cm以上。ただし、ブラケット一側足場であって40cm以上の幅の作業床を設けることが困難な場合には、24cm以上の幅の作業床とすることができる。
敷板及び敷盤等 足場には敷板を用いる。ただし、地盤の不等沈下のおそれがない場合には敷盤等を使用することができる。不等沈下がみられる場合には、ジャッキ型ベース金具等により調整。
昇降設備 足場には階段を設置。踏面は等間隔で設け、幅は20cm以上、けあげの高さは30cm以下とし、手すりを設置。

木造家屋建築工事の死亡災害に占める墜落災害発生状況の推移

木造家屋建築工事の死亡災害に占める墜落災害発生状況の推移

 

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