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「耳栓をすればよい」で終わらせない騒音対策

大きな音がする作業では、 「耳栓を付けてください」 という対策をよく見かけます。

もちろん、 耳栓やイヤーマフなどの聴覚保護具は 重要な対策です。

しかし、 騒音の大きな機械をそのまま使い、 作業方法も変えず、 最後に耳栓だけを付ける。

これだけで 騒音障害防止対策が終わるわけではありません。

ここでは、当協会の 「騒音障害防止のための教育」テキストと、 厚生労働省の 「騒音障害防止のためのガイドライン」をもとに、 騒音をどこから減らしていけばよいのか を順番に確認してみます。

まず「耳」ではなく「音の出どころ」を見る

騒音対策を考えるとき、 最初に見るのは 耳栓ではありません。

まず、 どこから大きな音が出ているのか を確認します。

① 騒音源
音を出している機械・工具・作業
↓
② 伝ぱ経路
音が作業者まで伝わる途中
↓
③ 作業のしかた
位置・時間・工程
↓
④ 聴覚保護具

厚生労働省のガイドラインでは、 聴覚保護具は、 騒音発生源対策や 伝ぱ経路対策等による騒音レベルの低減化を 十分に行うことができない場合に、 二次的に使用するもの とされています。

「耳栓をする」より前に、 「この音を小さくできないか」を考える。

音が発生してから耳へ届くまでの間にも、 できる対策があります。

対策① 騒音源そのものを小さくする

最も基本となるのが、 騒音の発生源そのものを改善する 方法です。

例えば、 より低騒音な機械や工具へ変更できないかを 検討します。

見るところ 対策の例
機械・工具そのもの 低騒音型の機械・工具へ変更する
摩耗・不釣合い等 給油、調整、部品交換など 点検・整備を行う
振動 防振ゴムや制振材などによって 振動を抑える
運転・作業方法 自動化や配置変更など、 音の発生を減らす方法を検討する

騒音源そのものを小さくできれば、 その場所で作業する人だけでなく、 周囲の作業者への騒音ばく露も 減らすことができます。

大きな音を出してから防ぐ
↓
できるだけ音を出さない方法へ

設備や工具を選ぶ段階から考える

すでに設置した大きな機械へ 後から防音対策を追加すると、 費用や作業スペースなどの問題が 出ることがあります。

設備や工具を新しく導入するときには、 能力や価格だけでなく、 できるだけ低騒音のものを選べないか も確認します。

作業場の配置を変更するときにも、 騒音源と作業者の位置関係を あらかじめ考えておくと、 後から行う対策を減らせる場合があります。

「設置してから防音」だけでなく「選ぶときから低騒音」

機械・工具を選ぶときに、 発生する騒音も確認してみます。

対策② 音が伝わる途中で小さくする

騒音源そのものを 十分に小さくできない場合でも、 音が作業者まで届く途中で 減らせることがあります。

これが 「伝ぱ経路対策」 です。

方法 考え方
距離を取る 配置を変更するなど、 騒音源と作業者を離す
遮蔽 遮蔽物や防音塀等を設置して 音が直接届くのを抑える
吸音 建屋内部等で反射する音を 吸音処理によって抑える
音源の向き 音源の向きを変更できないか検討する

また、 騒音源を防音カバーなどで囲う方法もあります。

ただし、 囲いに大きな開口部があったり、 作業のために常に開けた状態になったりすれば、 期待した効果が得られないことがあります。

対策を行った後には、 実際に騒音レベルが低下したかを確認 します。

「距離を取る」ことも対策になる

騒音源のすぐそばでなくても 作業できるのであれば、 作業位置を変えることも考えます。

騒音源から距離を取ることで、 作業者へ届く音を 小さくできる場合があります。

騒音源のすぐ近くで作業
↓
離れた位置でできる作業は移す
↓
騒音ばく露を低減

ただし、 壁や建物などによる反射がある場所では、 単純に距離だけから 騒音レベルを判断することはできません。

実際の作業場で 騒音レベルを把握しながら確認します。

対策③ 騒音の大きな作業にいる時間を減らす

設備や作業方法を改善しても、 第Ⅰ管理区分にならなかったり、 等価騒音レベルを 85dB未満にできなかったりすることがあります。

その場合には、 厚生労働省のガイドラインに示された 騒音レベルと1日のばく露時間の表を参考に、 騒音作業へ従事する時間の短縮 を検討します。

騒音を低減する
↓
それでも85dB未満にならない
↓
騒音作業時間の短縮も検討

例えば、 作業を分担する、 作業スケジュールを調整する、 遠隔操作を取り入れる、 騒音の少ない場所で行える作業は 別の場所で行う、 といった方法があります。

▶ 85dBを超えると何が変わる?

対策④ それでも残る騒音に聴覚保護具を使う

騒音発生源や伝ぱ経路などへの対策を行っても 十分に騒音を低減できない場合に、 耳栓やイヤーマフなどの 聴覚保護具を使用します。

騒音源対策
+
伝ぱ経路対策
+
作業方法・時間の管理
↓
残った騒音から耳を守る
耳栓・イヤーマフ
聴覚保護具は重要です。 しかし「最初から耳栓だけ」ではありません。

できるだけ作業環境の騒音を低減したうえで、 残る騒音に対して適切な聴覚保護具を使います。

耳栓なら、何でもよい?

聴覚保護具には、 製品によって遮音性能の違いがあります。

厚生労働省のガイドラインでは、 JIS T8161-1に規定する試験方法によって測定された遮音値 を目安として、 必要かつ十分な遮音値のものを 選定することとしています。

つまり、 「一番音を小さくするものを選べばよい」 というわけではありません。

確認すること 考え方
作業場の騒音 どの程度の遮音性能が必要か
作業内容 周囲の音や合図を聞く必要があるか
会話 作業中に意思伝達が必要か
装着する人 耳の穴の形や大きさに合っているか
他の保護具 ヘルメット等と組み合わせて 正しく装着できるか

遮音性能が高すぎても問題になることがある

危険作業では、 機械の異常音、 車両の接近、 警告、 周囲の作業者からの声などを 聞く必要がある場合があります。

厚生労働省のガイドラインでは、 安全確保のため周囲の音を聞く必要がある場合や、 会話の必要がある場合には、 必要以上に遮音値の大きい聴覚保護具を 選定しないよう配慮する こととしています。

遮音性能が足りない
耳を十分に保護できない
⇅
必要かつ十分な遮音性能
⇅
遮音性能が必要以上に大きい
合図・会話等を妨げる可能性

「遮音性能が大きければ大きいほどよい」 ではなく、 その作業に合ったものを選ぶ という考え方です。

耳栓とイヤーマフはどう使い分ける?

代表的な聴覚保護具には、 耳栓と 耳覆い(イヤーマフ) があります。

種類 特徴・確認点
耳栓 耳の穴の形や大きさには個人差があるため、 本人に適したものを選ぶ。
正しく挿入・装着できていることが重要
イヤーマフ 耳の周囲を覆うタイプ。
作業の性質や騒音の特性、 他の保護具との組み合わせも確認して選ぶ

耳栓とイヤーマフのどちらが適切かは、 作業の性質や騒音の特性 によって決めます。

また、 厚生労働省のガイドラインでは、 非常に強烈な騒音に対しては、 耳栓とイヤーマフを併用することが有効 とされています。

耳栓は「耳に入っている」だけでは足りない

同じ耳栓を使っていても、 装着方法によって 実際の遮音効果は変わります。

耳栓と耳の間に隙間があったり、 装着が緩んでいたりすると、 本来期待される遮音効果が得られません。

耳栓を持っている
↓
耳に合ったものを選ぶ
↓
正しく装着する
↓
作業中も装着状態を保つ

厚生労働省のガイドラインでは、 騒音障害防止対策の管理者に、 労働者へ聴覚保護具の正しい使用方法を指導させたうえで、 目視等により正しく使用されていることを確認 させることとしています。

作業中に緩んだ場合には、 その都度装着し直します。

発泡タイプの耳栓は「付け方」でも効果が変わる

発泡タイプの耳栓は、 ウレタンフォームを 細い棒状にして外耳道へ挿入し、 耳の中で膨らむのを待つ タイプがあります。

当協会テキストでも、 正しい装着方法を確認してから 使用することを紹介しています。

同じ耳栓でも「付け方」で効果が変わる

支給しただけではなく、 実際に正しく装着できているかまで 確認することが重要です。

▶ 耳栓のつけ方・聴覚保護具の選び方を見る

「会話したいから耳栓を外す」ではなく伝え方を考える

大きな騒音のある場所では、 もともと会話や合図が 聞き取りにくくなります。

さらに聴覚保護具を使用すると、 会話や周囲の音が 聞き取りにくくなる場合があります。

そこで、 そのたびに聴覚保護具を外すことを前提にするのではなく、 適切な意思伝達方法 をあらかじめ考えます。

困ること 考えること
声が聞こえない あらかじめ合図方法を決める
作業指示が伝わらない 静かな場所で指示を行うなど、 意思伝達方法を見直す
非常時の警報が聞こえにくい 赤色回転灯など、 音響以外の方法も検討する

厚生労働省のガイドライン解説でも、 騒音作業場では適切な意思伝達手段を考えること、 非常時の警報には 赤色回転灯など音響以外の方法を用いて 二次災害防止に配慮すること が示されています。

騒音対策は「設備」と「保護具」だけでもない

騒音障害防止のためのガイドラインでは、 設備改善や聴覚保護具だけでなく、 管理体制、作業管理、健康管理、労働衛生教育 まで含めて対策を行います。

騒音レベルを把握
+
騒音を低減
+
作業方法・時間を管理
+
聴覚保護具を適切に使用
+
健康管理・教育

「耳が遠くなった気がする」を待たない

騒音性難聴は、 大きな騒音へのばく露が続くことで 徐々に進行することがあります。

本人の自覚だけで 早い段階の聴力低下を見つけることは 難しい場合があります。

厚生労働省のガイドラインでは、 騒音作業に常時従事する労働者について、 雇入れの際または その業務へ配置替えする際に 騒音健康診断を行うこととしています。

さらに、 原則として 6月以内ごとに1回、定期に 騒音健康診断を行う こととしています。

ただし、 第Ⅰ管理区分に区分されることが継続している場所や、 等価騒音レベルが継続的に85dB未満である場所で 業務に従事する労働者については、 定期健康診断を省略できる場合があります。

本人の自覚だけに頼らない。

騒音レベルの測定と 聴力の確認の両方から、 変化を把握します。

健康診断の結果も、作業管理へ戻す

騒音健康診断は、 受診して終わりではありません。

ガイドラインでは、 聴力レベルに応じて 健常者、要観察者、要管理者 に区分し、 必要な措置へつなげます。

前駆期の症状や 軽度の聴力低下が認められる人については、 85dB以上90dB未満の場所などでも 聴覚保護具を使用させるほか、 必要な措置を講じます。

中等度以上の聴力低下が認められる人については、 聴覚保護具の使用、 騒音作業時間の短縮、 配置転換その他の必要な措置 を講じます。

騒音健康診断
↓
聴力の状態を確認
↓
必要なら作業管理を見直す

現場で「耳栓以外」を探してみる

騒音の大きな作業を見つけたら、 「耳栓を着用しているか」だけでなく、 順番に確認してみます。

確認してみること 確認
どの機械・工具・作業が主な騒音源か確認した □
低騒音の機械・工具へ変更できないか検討した □
機械・工具の点検・整備状態を確認した □
遮蔽物、防音塀、吸音など 伝ぱ経路で低減できないか検討した □
騒音源から作業位置を離せないか検討した □
騒音作業へ従事する時間を短くできないか検討した □
必要かつ十分な遮音値の聴覚保護具を選んだ □
耳栓等を正しく装着できているか確認した □
合図・会話・非常時の連絡方法を確認した □
必要な労働衛生教育や騒音健康診断につながっているか確認した □

耳栓は、 騒音対策の「全部」ではなく、 いくつもある対策の一つです。

音を出すところから、 音が伝わる途中、 作業方法、 作業時間、 聴覚保護具、 そして健康管理まで。

「耳を守る」だけでなく、 「耳へ届く音そのものを減らす」 ところから考える。

それが、 騒音障害防止対策を 「耳栓を配って終わり」にしないためのポイントです。

騒音対策を2本続けて確認する

まず、 85dBという数字が 現場で何を意味するのかを確認したい場合は、 こちらをご覧ください。

▶ 85dBを超えると何が変わる?

講習テキストでも確認できます

当協会の 「騒音障害防止のための教育」テキストでは、 騒音発生源、 音の伝ぱ経路、 代表的な騒音低減措置について解説しています。

▶ 騒音ばく露低減措置を見る

耳栓・イヤーマフの選定、 聴覚保護具の正しい装着方法などについては、 次の章で確認できます。

▶ 聴覚保護具の使用とその他の作業管理を見る

厚生労働省では、 令和5年(2023年)4月に改訂した 「騒音障害防止のためのガイドライン」と パンフレット等を公開しています。

▶ 厚生労働省「騒音障害防止対策」を見る

▶ 「騒音障害防止のためのガイドライン」を見る


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