【第1章】第2節 労働災害の仕組みと発生した場合の対応 3

第2節 労働災害の仕組みと発生した場合の対応③

(4)労働災害が発生した場合の対応

第一次措置

① 災害が起きた場所への立ち入り禁止、作業者の退避、機械などの停止を行い、被害の拡大を最小限に抑え、二次災害の発生を防止する。

② 災害の程度をよく把握し、人命救助を行う。このとき、救助する場所は安全な場所を選ぶこと。

③ 救急車を要請して、災害の程度、発生状況を確認し、直属の上司や現場所長に、正確な情報をできるだけ早く報告(第一報)する。

④ 救急隊が到着するまでの間、一次救命処置と応急手当を行う。現場で行う応急処置は傷病をそれ以上悪化させないためのもので、一時的な措置であるが、被災者の意識がないなどの重大な症状の場合は、一刻も早く処置を行う必要がある。

⑤ 正確な処置ができるように救急の知識やAED(自動体外式除細動器)の所在場所・使用方法などを身に付けておく。


災害発生時の第一次措置

第二次措置

災害発生現場は、災害発生時の緊急措置により状況が変化したり、仕事の再開を急いだりするあまり整理・処分されがちですが、これらは災害調査における重要な証拠物件となるので、極力立入禁止措置はそのまま継続し、災害調査に備えます。


労働災害発生時の対応

労働災害発生時の事業主の報告義務

 

(5)労災かくしとは

労働者死傷病報告書を所轄労働基準監督署に提出しない、あるいは虚偽の報告をすることを労災かくしといいます。

不幸にして労働災害が発生した場合には、

  • 正しい労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署へ提出
  • 労災保険を請求する(健康保険等での請求はしない)

が正しい処理の仕方です。


労働災害を起こそうと思って作業をしている人は1人もいません。不幸にして災害が発生した場合は、いわば「過失」です。しかし労災かくしは意識して行うもの、つまり「故意」に行うものであり非常に悪質であり、まさしく犯罪です。

厚生労働省では労災かくしを「労働災害の発生に関し、その発生事実を隠蔽するため、故意に労働者死傷病報告書を提出しないもの及び虚偽の内容を記載して提出するもの」(平成3年12月5日基発第687号)と定義しています。


労災かくしは何故だめなのか

店社や現場で安全意識が強くなり、災害は絶対起こしてはならないという考え方が強くなってくると、災害の発生事実を隠ぺいしようとする誤った考え方が発生してきます。


労災かくしが行われることによる問題点は次のとおりです。

① 労働災害の発生状況を正確に把握し、災害原因を究明、再発防止対策を講じることは労働災害防止上重要であるが、それができなくなる

② 事業所内で災害発生の事実に目をつぶり自主的な再発防止対策を講ずることができなくなり、事業者による労働災害への取り組み意欲の欠如につながる。

③ 労災保険による適正な保険給付が行われず、下請業者や被災労働者が負担を強いられる

④ 会社利益を優先すると、人命尊重意識が損なわれ、やがては勤労意欲の減退にもつながる


労災かくしは何故行われるのか

ほとんどの労災かくしは、発生した労働災害が「軽い災害」あるいは「たいしたことの無い災害」であり、速やかに店社に報告せず現場内や下請自身で処理しようとしているところから発生しています。 理由としては、次のようなことが考えられます。


元請側

◎災害を発生させると会社からひどく怒られるのがいやなため

○今まで自分の安全成績が良かったのでそのまま継続したかった

○自分の現場の無災害記録を継続させたい

○会社の無災害記録が続いているのに、自分の現場で第1号を発生させるのは恥ずかしい

○メリット還付率が悪くなる

○発注者の都合を考えた

○被災者が外国人労働者であったため


協力業者

◎災害を発生させると元請との今後の取引に影響が出る

○元請に迷惑がかかる

〇不法就労が発覚する

〇なんらかの法令違反を問われる可能性がある


労災かくしは何故発覚するのか

労災かくしが発覚する理由は「被災者、家族、あるいは同僚が店社に訴えたり、監督署へ申告したり」が大部分です。これは、治療費用や生活費等金銭的な補償を会社、あるいは元請け事業者が行わないため、被災者や家族が困ってといった例が多いようです。あってはならないことです。


「労災かくし」による検察庁への送検件数の推移

労災かくしについては、厚生労働省も厳格に対処しており(「いわゆる労災かくしの排除について」参照)、その送検件数の推移は次のようになっています。なお、送検件数の全産業に対する建設業の割合は約60%となっています。


労働安全衛生法第100条及び第120条違反


基発第687 号 平成3 年12 月5 日            労働省労働基準局長


いわゆる労災かくしの排除について

1  基本的な考え方
労働安全衛生法が労働者の業務上の負傷等について事業者に対して所轄労働基準監督署長への報告を義務付けているのは、労働基準行政として災害発生原因等を把握し、当該事業場に対し同種災害の再発防止対策を確立させることはもとより、以後における的確な行政推進に資するためであり、労働災害の発生状況を正確に把握することは労働災害防止対策の推進にとって重要なことである。


最近、労働災害の発生に関し、その発生事実を隠蔽するため故意に労働者死傷病報告書を提出しないもの及び虚偽の内容を記載して提出するもの( 以下「労災かくし」という。) がみられるが、このような労災かくしが横行することとなれば、労働災害防止対策を重点とする労働基準行政の的確な推進をゆるがすこととなりかねず、かかる事案の排除に徹底を期する必要がある。


このため、臨検監督、集団指導等あらゆる機会を通じ、事業者等に対し、労働者死傷病報告書の提出を適正に行うよう指導を徹底するとともに、関係部署間で十分な連携を図り、労災かくしの把握に努め、万一、労災かくしの存在が明らかとなった場合には、その事案の軽量等を的確に判断しつつ、再発防止の徹底を図るため厳正な措置を講ずるものとする。


2  事案の把握及び調査
労災かくしは、事業者が故意に労災事故を隠蔽する意思のもとに行われるため、その事案の発見には困難を伴うものが多いが、疑いのある事案の把握及び調査に当たっては、特に次の事項に留意し、関係部署間で組織的な連携を図り、的確な処理を行うこと。


(1)労働者死傷病報告書、休業補償給付支給請求書等関係書類の提出がなされた場合には、当該報告書の内容を点検し、必要に応じ関係書類相互間の突合を行い、災害発生状況等の記載が不自然と思われる事案の把握を行うこと。


(2)被災労働者からの申告、情報の提供がなされた場合には、その情報に基づき、改めて労働者死傷病報告書、休業補償給付支給請求書等関係書類の提出の有無を確認し、また、その相互間の突合を行い事案の内容の把握を行うこと。


(3)監督指導時に、出勤簿、作業日誌等関係書類の記載内容を点検し、その内容が不自然と思われる事案の把握を行うこと。


(4)上記(1) から(3) により把握した事案については、実地調査等必要な調査を実施し、労災かくしの発見に徹底を期すること。


3  事案を発見した場合の措置
労災かくしを行った事業場に対する措置については、次に掲げる事項に留意の上、再発防止の徹底を図るため厳正な措置を講ずること。


(1)労災かくしを行った事業場に対しては、司法処分を含め厳正に対処すること。


(2)事案に応じ、事業者に出頭を求め局長又は署長から警告を発するとともに、同種事案再発防止対策を講じさせる等の措置を講ずること。


(3)本社又は支社等が他局管内に所在し、同種事案について所轄局署の注意を喚起する必要があると思われる事案、特に重大・悪質な事案等については、速やかに局へ連絡し、必要に応じ関係局間・本省とも連携を図り、情報の提供その他必要な措置を講ずること。


(4)建設事業無災害表彰を受けた事業場にあっては、平成3 年12 月5 日付け基発第685 号「建設事業無災害表彰内規の改正について」をもって指示したところにより、当該無災害表彰状を返還させること。


(5)労災保険のメリット制の適用を受けている事業場にあっては、メリット収支率の再計算を行い、必要に応じ、還付金の回収を行う等適正な保険料を徴収するための処理を行うこと。

 

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