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【第5章】第3節 災害事例⑤

3-2 硫化水素中毒

4 汚水処理施設

汚水槽内における硫化水素中毒(清掃業:死亡2名、休業1名)


硫化水素中毒

(1)発生状況

① 本汚水処理施設では、水産食料品製造工場から排出される汚水の浄化を行っている。汚水には、魚介類を加工する際に出る魚介類の血、皮、骨が混入しており、それが30~40t/日程度汚水槽に流入する。この汚水の腐敗を防ぐ目的で嫌気性菌を利用するため、空気ポンプによる送気、汚水の撹拌等の装置が設置されているが、災害発生前数ヶ月間は稼働されていなかった。

② 災害発生当日、汚水槽から汚水があふれているため点検を行った結果、汚水の配管に取り付けられた逆流防止弁が腐食し、破損していることが判明した。このため、作業員3名で逆流防止弁を修理するため、汚水槽内に入り、弁前後の汚水配管の切断作業にとりかかった。作業員1名が脚立を用いて汚水槽の上部から内部に降りようとしたところ、意識を失い汚水中に転落した。このため、他の2名が災害発生の通報後、被災者を救出するため漕内に降りようとしたが、2名とも同様に被災し、死亡した。


(2)原因

① 汚水槽は通常密閉されており、作業開始前に換気が行われなかった。また、腐敗防止のための装置を数ヶ月間稼働させていなかったため、硫化水素が高濃度で滞留していた。

② 被災者は墜落制止用器具を使用していなかったため、高濃度の硫化水素を吸入し、意識を失った際、漕内に転落した。また、救出に向かった2名は呼吸用保護具を使用しなかった。


(3)再発防止策

① マンホール内で作業を行う場合は、酸素濃度が18%以上、硫化水素濃度が10ppm以下になるよう十分に換気を行う。

② 工事の規模にかかわらず、保護具の仕様に関する内容も含めた作業手順書を策定し、周知徹底を図る。

③ 酸素欠乏硫化水素危険作業主任者を選任し、作業を直接指揮させる。

④ 酸素欠乏硫化水素危険作業に従事する者には特別教育を実施する。

⑤ 酸素欠乏硫化水素危険場所に入る際には有効な呼吸用保護具を使用させる。



5 魚粉製造プラント

タンク内における硫化水素中毒(水産食料品製造業:休業1名)


(1)発生状況

① 被災者は同僚作業員と魚粉や魚油を製造するプラントを点検したところ。原料となる魚滓の血流が流れ込む血汁タンクに接続している配管が詰まり、スクリューコンベアのパッキン部分から血汁が漏れ出していることを確認した。

② そこで被災者は、配管の詰まりを修理するため、タンク上部の点検口から頭部が出る位置まで内部に入った。その後、作業を続けるために頭部もタンク内に入ったところ、身体がタンク内に沈み込んだ。

③ タンク上部でホースをもっていた同僚作業員は、直ちにタンク点検口に入り、頭部をタンクの外に出したまま、被災者の襟を掴むとともに助けを求め、駆けつけた清掃作業員とともに被災者をタンクの外に出した。

④ 被災者は救急搬送され、搬送先病院で急性硫化水素中毒の疑いと診断された。


(2)原因

① 被災者がタンク内部に入る前に酸素濃度及び硫化水素濃度を測定しなかった。また、測定に必要な器具を有効な状態で保持していなかった。

② 作業場には設備の運転マニュアルは備えてあったが、書面による工場内の安全管理規定、非定常作業を含めた作業手順書を整備していなかった。

③ 作業場内に酸素欠乏硫化水素危険箇所が存在していたが、作業主任者を選任していなかった。

④ 作業場には空気呼吸器等の保護具が備え付けられていなかった。

⑤ 工場長以下の指揮命令系統が確立されていなく、各作業員の経験に頼った状態で作業が実施されていた。


(3)再発防止策

① 酸素濃度、硫化水素濃度を測定するための機器を備え付け、タンク内部での作業を開始する前に酸素濃度、硫化水素濃度を測定し、その結果により換気等の対策を講じる。また、この記録は3年間保存する。

② 第2種酸素欠乏危険作業に該当する場所では、空気中酸素濃度18%以上、かつ、硫化水素濃度を10ppm以下に保つよう換気を十分行う。

③ 当該作業における危険有害要因の洗い出しをおこない、安全衛生管理規定、作業手順書等を作成し、関係労働者に周知する。

④ 酸素欠乏硫化水素危険作業主任者を選任し、作業を直接指揮させる。

⑤ 作業に従事する者には酸素欠乏硫化水素中毒危険作業に関する特別教育を実施する。

⑥ 酸素欠乏硫化水素中毒危険場所に入る際に有効な呼吸用保護具、要求性能墜落制止用器具、はしご、ロープ等非常時に労働者を避難させ、もしくは救出するために必要な用具を備え付け、使用させること。

⑦ 安全衛生管理体制を確立し、作業における指揮命令系統を明らかにする。


厚生労働省「職場のあんぜんサイト」より引用(一部改変)


 

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