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【第4章】第3節 救急処置②

2 一次救命処置

2-1一次救命処置の手順

一次救命処置(BLS)とは、心臓や呼吸が止まってしまった人を助けるために 心肺蘇生を行ったり、AEDを使ったりする緊急の処置のことを指します。また、 食べ物などが喉に詰まって呼吸ができなくなった場合、そのまま放置すればやがては心臓も止まってしまいます。そうならないように、喉に詰まった物(異物)を取り除くための方法(気道異物除去法)も一次救命処置に含まれます。ここでは、一次救命処置のうち、心肺蘇生の方法とAEDの使用方法について、順を追って説明します。図はこの大まかな流れを示しています。成人も小児・乳児も一次救命処置の手順は同じです。


主に市民が行う一次救命処置(BLS)の手順

1)安全を確認する

誰かが突然倒れるところを目撃したり、倒れているところを発見した場合は、ま ず周囲の状況が安全かどうかを確認します。車の往来がある、室内に煙がたち込め ているなどの状況があれば、それぞれに応じて安全を確保しましょう。自分自身の 安全を確保することは傷病者を助けることよりも優先されます。暴力行為を受けた り、火事や感電事故に巻き込まれる危険がある場合には傷病者に近づかず、警察や消防の到着を待ったほうがよいこともあります。


2)反応を確認する

安全が確認できたら、傷病者の反応を確認します。傷病者の肩をやさしくたたきながら大声で呼びかけたときに(図6)、目を開けるなどの応答や目的のある仕草があれば、反応があると判断します。突然の心停止が起こった直後には引きつるような動き(けいれん)が起こることもありますが、この場合は呼びかけに反応しているわけではないので、「反応なし」と判断してください。  

「反応なし」と判断した場合や、その判断に自信が持てない場合は、心停止の可能性を考えて行動します。「誰か来てください!人が倒れています!」などと大声で叫んで応援を呼んでください(図7)。



3)119番通報をしてAEDを手配する

そばに誰かがいる場合は、その人に119番通報をするよう依頼します(図8)。また近くにAEDがあれば、それを持ってくるよう頼みます。できれば「あなた、119 番通報をお願いします」「あなた、AEDを持ってきてください」など、具体的に依頼するのがよいでしょう。  


119番通報するときは落ち着いて、できるだけ正確な場所と、呼びかけても反応がないことを伝えましょう。もしわかれば、傷病者のおよその年齢や突然倒れた、けいれんをしている、体が動かない、顔色が悪いなど倒れたときの状況も伝えてください。

119番通報をすると電話を通して、あなたや応援に来てくれた人が行うべきことを指導してくれます(図9)。AEDが近くにある場合には、その場所を教えてもらえることもあります。また、電話を通して「胸骨圧迫ができますか」と尋ねられるので自信がなければ指導を求め、落ち着いて従ってください。  


大声で叫んでも誰も来ない場合は、心肺蘇生を始める前に119番通報とAEDの手配をあなた自身が行わなければなりません。この場合、AEDを取りに行くために傷病者から離れてよいのか心配になるかもしれません。すぐ近くにAEDがあることがわかっていれば、あなた自身でAEDを取りに行ってください。


4)呼吸を観察する

心臓が止まると普段どおりの呼吸がなくなります。

傷病者の呼吸を観察するには、胸と腹部の動き(呼吸をするたびに上がったり下がったりする)を見ます(図10)。胸と腹部が動いていなければ、呼吸が止まっていると判断します。呼吸が止まっていれば心停止なので、胸骨圧迫を開始してください。

図2-1 肺の構造、肺胞、肺毛細血管

一方、突然の心停止直後には「死戦期呼吸」と呼ばれるしゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸がみられることも少なくありません。このような呼吸がみられたら心停止と考えて、胸骨圧迫を開始してください。普段どおりの呼吸かどうかがわからないときも胸骨圧迫を開始してください。  

呼吸の観察には10秒以上かけないようにします。約10秒かけても判断に迷う場合は、普段どおりの呼吸がない、すなわち心停止とみなしてください。  

反応はないが普段どおりの呼吸がある場合には、様子を見ながら応援や救急隊の到着を待ちます。とくに呼吸に注意して、呼吸が認められなくなったり、呼吸が普段どおりではなくなった場合には、心臓が止まったとみなして、ただちに胸骨圧迫を開始してください。


5)胸骨圧迫を行う

呼吸の観察で心停止と判断したら、ただちに胸骨圧迫を開始します。


(1)圧迫の部位  

胸の左右の真ん中に「胸骨」と呼ばれる縦長の平らな骨があります。圧迫するのはこの骨の下半分です。この場所を探すには、胸の真 ん中(左右の真ん中で、かつ、上下の真ん中)を目安にします(図11)。具体的な場所については、消防機関や日本赤十字社などが行っている救急蘇生法の講習会で教えてもらえます。



(2)圧迫の方法

胸骨の下半分に一方の手のひらの基部(手掌基部)を当て、その手の上にもう一方の手を重ねて置きます。重ねた手の指を組むとよいでしょう。圧迫は手のひら全体で行うのではなく、手のひらの基部(手掌基部)だけに力が加わるようにしてください。指や手のひら全体に力が加わって肋骨が圧迫されるのは好ましくありません。垂直に体重が加わるよう両肘をまっすぐに伸ばし、圧迫部位(自分の手のひら) の真上に肩がくるような姿勢をとります。


(3)圧迫の深さとテンポ  

傷病者の胸が約5cm沈み込むように強く、速く圧迫を繰り返します(図12)。 圧迫の強さが足りないと十分な効果が得られないので、しっかり圧迫することが重要です。小児では胸の厚さの約1/3沈み込む程度に圧迫します。成人でも小児でも、こわごわと圧迫したのでは深さが足りずに十分な効果が得られません。 強く、速く圧迫しつづけるように心がけましょう。ただし、体が小さいため両手では強すぎる場合は片手で行います。  圧迫のテンポは1分間に100~120回です。胸骨圧迫は可能な限り中断せずに、絶え間なく行います。



(4)圧迫の解除  

圧迫と圧迫の間(圧迫を緩めている間)は、胸が元の高さに戻るように十分に圧迫を解除することが大切です。ただし、圧迫を解除するために自分の手が傷病者の胸から離れると、圧迫位置がずれることがあるので注意します。


(5)救助者の交代

成人の胸が約5 cm沈むような力強い圧迫を繰り返すには体力を要します。疲れてくると気がつかないうちに圧迫が弱くなったり、テンポが遅くなったりするので、常に意識して強く、速く圧迫します。ほかに手伝ってくれる人がいる場合は、1~2分を目安に役割を交代します。交代による中断時間をできるだけ短くすることが大切です。とくに人工呼吸を行わず胸骨圧迫だけを行っている場合は、より短い時間で疲れてくるので、頻繁な交代が必要になります。


6)胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせ

講習を受けて人工呼吸の技術を身につけていて、人工呼吸を行う意思がある場合 には、胸骨圧迫に人工呼吸を組み合わせます。胸骨圧迫と人工呼吸の回数は30:2 とし、この組み合わせを救急隊員と交代するまで繰り返します。  

人工呼吸のやり方に自信がない場合や、人工呼吸を行うために傷病者の口に直接接触することにためらいがある場合には、胸骨圧迫だけを続けてください。


7)AEDを使用する

AEDは、音声メッセージとランプで実施するべきことを指示してくれるので、それに従ってください。AEDを使用する場合も、AEDによる心電図解析や電気ショックなど、やむをえない場合を除いて、胸骨圧迫をできるだけ絶え間なく続けることが大切です。


8)心肺蘇生を続ける

心肺蘇生は到着した救急隊員と交代するまで続けることが大切です。効果がなさそうに思えても、あきらめずに続けてください。
傷病者に普段どおりの呼吸が戻って呼びかけに反応したり、目的のある仕草が認められた場合は心肺蘇生をいったん中断しますが、判断に迷うときは継続してください。心肺蘇生を中断した場合は反応の有無や呼吸の様子を繰り返しみながら救急隊の到着を待ちます。呼吸が止まったり、普段どおりでない呼吸に変化した場合はただちに心肺蘇生を再開します。


 

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