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【第5章】指差し呼称、指差し唱和、タッチ・アンド・コール


業務を安全に、誤りなく進めていくことは大変重要なことなので、事故や災害が起きないように誰でも意識して、あるいは無意識で確認行動を取っているはずです。この確認行動をより確実に、正確に実施するために、指差し呼称等について解説し、その実践手法を紹介します。

指差し呼称とは、行動の要所要所で、自分の確認すべきことを「○○○○ヨシ!」と、確認対象に腕を伸ばしてしっかり指差し、はっきりした声で呼称して確認することをいいます。もともと国鉄(旧日本国有鉄道)で創始された日本オリジナルの安全確認法で100年の歴史があります。

1.指差し呼称の有効性

指差し呼称は、人間の心理的な欠陥に基づく誤判断、誤操作、誤作業を防ぎ、事故・災害を未然に防止するのに役立ちます。対象を見つめ、腕を伸ばして指を差し、声を出すことで、意識レベルをギアチェンジして正常でクリアーな状態にします。

意識レベルの5段階

故橋本邦衛(日大生産工学部教授)は、意識レベルには5段階あり、日常の定常作業は、ほとんどレベルⅡ(正常でくつろいだ状態)で処理されるので、レベルⅡの状態でもエラーしないような人間工学的な配慮をする必要があると同時に、非定常業務のときは、自分でレベルⅢ(正常で明快な状態)に切り替える必要があり、そのためには指差し呼称が有効であると言っています。

また、KY活動の実践事例の中でレベルⅣ(過緊張)をレベルⅢに切り替えるためにも指差し呼称が有効であると実証されています。

つまり、意識レベルを引き上げるとき(レベルⅠ、ⅡからレベルⅢへ)のみでなく、意識レベルを引き下げるとき(レベルⅣからレベルⅢへ)にも有効です。

大脳生理学でも、次のような事実が明らかにされています。

①末梢の筋肉知覚のうち、口のまわりの咬筋(こうきん)の運動を伝える刺激は、脳を的確に処理できる状態にするのに大きな役割を果たします。

②腕の筋肉の中の筋紡錘(きんぼうすい)という細胞は、大脳の働きを活発にします。

③視知覚だけでなく「指差し」による運動知覚、「呼称」による筋肉知覚や聴覚などの諸領域の参加によって、意識に強く印象付けられ、対象認知の正確度が高まります。

指差し呼称の理屈

危険予知を行う中で、節目ごとに指差し呼称を入れていくと意識レベルが上がります。

また、認識力も上がるので潜在意識の中に安全行動が打ち込まれていきます。結果として無意識の中で自然に安全行動を行うような癖がつきます。

指差し呼称の効果実験の結果

平成6年(財)鉄道総合技術研究所が行った「指差し呼称」の効果検定実験結果によると、“なにもしない場合”に比べ“指差し呼称をする場合”には誤りの発生率が約6分の1以下になるということが示されています。

正しい姿勢と大きな声がそろわないと効果は期待できません

2.指差し呼称のやり方

練習では、指差し呼称の基本形を次のとおり徹底して身につけます。

①目は・・・確認すべき対象を、しっかり見る。

②腕・指は・・・左手は親指が後ろになるようにして手のひらを腰にあてる。
右腕を伸ばし、右手人指し指で対象を差す。
「○○」のあとで、いったん耳元まで振り上げて、本当に良いかを考えて確かめた上で、「ヨシ!」で振り下ろす。
右手は、縦拳(親指を中指の上にかけ、握りの渦巻きを天井に向ける)から人差し指を伸ばす形をとる。
*左利きの人は、その逆で行う。

③口は・・・はっきりした声で、「○○ヨシ!」、「スイッチ・オンヨシ!」「バルブ開ヨシ!」などと唱える。

④耳は・・・自分の声を聞く。目、腕、口、指などを総動員して、自分の作業行動や対象物の状態を確認する手段です。

3.指差し呼称の正しい動作

①意識をクリアーな状態にするため、動作には適度の緊張が必要です。きびきびと行うようにしましょう。

②「呼称」する内容は、注意力を集中させるため「温度ヨシ!」ではなく「温度○度ヨシ!」、「車椅子車輪ヨシ!」ではなく「車椅子車輪固定ヨシ!」というように、呼称内容は鋭く具体的な表現を工夫します。

③必要以上に大声を出さなくてもよいのですが、練習では「恥ずかしさ」「照れくささ」などを吹っ切るために、みんなで大きな声と動作で行います。

④特に重要な指差し呼称箇所では「○○○○ヨイカ?」、「○○○○ヨシ!」と自問自答してしっかり確認します。


ヒューマンエラーを防止するためには、上述のような正しい動作が望ましいのですが、大きな声や動作ができない場合もあります。

それでも、しっかり確認することは必要ですから、声を出さずに手で触れて確認するなど状況に合った方法を工夫しましょう。ちなみに旅客機の客室乗務や病院の看護の現場などにおいても状況は同じですが、同様に工夫し実践されています。

4.指差し呼称項目の決め方と確認対象

指差し呼称は行動の要所要所で行いますが、次のようなケースを参考に指差し呼称の必要な箇所を選定します。
 ①これまで事故・災害や重大なミスがあった業務
 ②手順を間違えた場合に重大な事故・災害に結び付きそうな業務
 ③業務が複雑あるいは、類似内容で間違いやすい業務

そして次にあげるようなものを確認の対象とします。
 ①人の確認
  a.自分自身b.共同業務・・・位置、姿勢、服装など
 ②物の確認
  a.安全設備(手摺など)b.安全装置(リミッターなど)c.標識…など

これを呼称したら「問題が解消されたことを確認できる」という内容を指差し呼称項目として設定します。そして、現場・現物で・どういう内容で・この場所でと具体的に決め、全員が同じ動作で行えるよう繰返し練習をしましょう。そして定着のためにも何回も「復習」をしましょう。


指差し唱和の実践

指差し唱和は、全員でスローガン等の対象を指差し、唱和して確認することにより、気合を一致させ、チームの一体感・連帯感を高めることをねらいとした手法です。

一般に、朝礼・終礼時に「一人ひとりカケガエノナイひとヨシ!」「今日も一日、安全作業で頑張ろう!」などのスローガンや、KYTの確認項目(第2ラウンド:危険のポイント、第4ラウンド:チーム行動目標など)を確認しあったり、実行を誓い合う時などに用いられます。


タッチ・アンド・コールの実践

バレーボールやサッカー、野球などのチームスポーツで、選手が手をタッチしたり、肩を組んだり、声を出し指を突き上げたりして気合を一致させる行動がよく見られます。これがタッチ・アンド・コールで、職場の業務推進の力として活用しようというものです。

タッチ・アンド・コールは、指差し唱和の一種といえます。その特徴は、チーム全員が手を重ね合わせたり、組み合わせたりして触れ合いながら行います。

全員でスキンシップを行うこのタッチ・アンド・コールはチームの一体感、連帯感を高め、チームワークづくりに役立ちます。

同時に、大脳の旧皮質(欲求や感情を司る脳)によいイメージを叩き込み(社会帰属性・・仲間でいたい、ルールを守ろう、ケガをしたくないなど)、無意識に安全行動をするように、ウッカリしたりボンヤリしたりしないようにするのがねらいで、チーム活動のメリハリをつける時などに活用しましょう。


タッチ・アンド・コールのやり方

指差し唱和と同様、リーダーの「~ヨシ!」に続いて、全員で「~ヨシ!」と指差し唱和をします。

KYTの研修会で行っているタッチ・アンド・コールの型の例を以下に3種類示します。です。チームの人数に応じて3種類を使い分ければよいでしょう。

タッチ・アンド・コールのやり方

 

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