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【第6章】第2節 リスクアセスメント事例

1. 暑熱作業に関する基準例

 作業を中止できない状況の中でどのように作業管理を行っていくかは大変難しいところであるが、各職場で WBGT 値に対する作業管理の方法を決めておくのがよいです。 例えばある会社のある部署では、表Ⅲ-1のように規定しています。作業環境や保護具、作業強度は各部署、作業場によって異なるので、それぞれの基準を自ら定め、その上で各作業に対して、作業標準書 / 手順書の中でさらに詳細に記述して管理します。


WBGT 値と作業管理の例(それぞれの作業ごとに決める)
WBGT 値 作業管理方法
危  険
(31℃以上)

作業開始前に水分等を補給し作業時間30分に1回以上、涼しい場所で休憩と水分補給をする

厳重警戒
(28-31℃未満)

作業開始前に水分等を補給し作業時間1時間に1回以上、涼しい場所で休憩と水分補給をする

警  戒
(25-28℃未満)

作業開始前に水分等を補給し作業時間1時間30分に1回以上涼しい場所で休憩と水分補給をする

注  意
(25℃未満)

作業時間 2 時間に 1 回以上涼しい場所で休憩と水分等を補給する


 管理監督者が作業中に注意すべきことは、熱中症だけではないことから、あらかじめ作業標準書 / 手順書を定める際に、暑熱作業に対しては、暑熱環境、作業強度、衣服・装備の状況などから作業継続時間を定め、作業継続時間に対応した交代要員を準備してから作業に取りかかることが重要です。交代要員がいない場合は、作業終了まで気分が悪くても我慢して作業してしまうことも多いです。

 作業継続時間は、熱中症を予防するために定めるので、その作業に慣れた人はもちろん、新人に対しても適用可能な基準であることが必要です。個々人の体調管理は別途行うとすれば、健康な作業者であれば、誰でも安全に作業を行える継続時間でなければなりません。

 下の表は特に高温のやや特殊な事例ではあるが、溶解窯 ( 溶解温度約 1600℃ )の側での作業に対して、その暑熱度、保護具、作業強度を元に継続時間を定めた事例です。最も短い継続時間は、10 分です。本表以外にも 40 分、60 分など作業ごとに定めています。


作業継続時間の事例
作業継続時間 保護具 作業名
10分 全身耐熱服 溶解窯上部での作業
15分 上半身耐熱服 溶解窯開口側部での作業
20分 上半身耐熱服 溶解窯側部での作業

 溶解窯直近の作業では、暑熱作業以外への変更は不可能です。したがって、外段取りを十分行った上で、短い作業継続時間の中でいかに効率よく作業するかを作業標準書 / 手順書の中で十分検討します。 

 一方、長く行っている作業に対して、リスクアセスメントや熱中症の発症を機にその作業が不可避の作業であるかを検討することも重要です。紹介する事例は、製造ラインの部品を解体し、屋外で高圧温水 (80℃ ) を用いてスケールを除去する作業です。

 作業服装は、ヘルメット、ゴグル、長いゴム手袋、合羽、長靴であり、炎天下で暑く湿度も高く、あるとき熱中症が発生しました。そこで作業自体を見直し、40℃の温水に 2 ~ 3 時間浸けこみ、スケールを溶かすようにしました。スケールを除去するための時間は延びたが、作業としては 30 分ごとの見回りと最終仕上げのみとなり、暑熱作業自体が大きく軽減されました。

 このようにこれまで疑問に思わず行っている作業でも熱中症予防という観点で見直してみると改善できる事例が少なくありません。

2. リスクアセスメント記入用紙と記入例

リスクアセスメント記入用紙
リスクアセスメント記入例

3. 【理解の確認と討議】

【理解の確認】

  • リスクアセスメントの手順は何段階でその内容は?
  • 暑熱のリスクアセスメントを評価する指標は何でしょう?(本テキストで使用している指標)

【討議】

  • 本テキストのリスクアセスメントのテンプレート原紙を使用して、関係者と自分たちの職場の暑熱のリスクアセスメントを実施してください。

 

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