ヒューマンエラーを防ぐには?

ヒューマンエラーはなぜ起こるのか、その原因を踏まえ、ヒューマンエラーによる労働災害を防ぐ対策について考えていきましょう。

【1】建設現場は安全対策が難しい?

「建設現場は安全対策が難しい」といわれています。
その理由は、建設現場に
1.作業内容が日々変化する
2.多業種の専門工事業者が入場している
3.単品受注生産である
4.雇用期間が短い
といった特徴があるからです。(参考文献※3)

つまり、様々な事業者と作業員が(2、4)、同じ場所に同じ条件で同じ物をつくることのない一度きりの現場で(3)、様々な作業をする(1)のが建設現場です。このため、安全対策を講ずる上で、適切な安全設備の設置に限界がある、作業のマニュアル化に限界がある、事業者や作業員間の連絡・調整が難しい、作業員への継続的な教育・訓練が難しい、といった特徴があります。

しかし、これらの特徴は、建設現場での安全対策を練るときのポイントを示してくれています。まさに、ここに「全産業の中で労働災害の発生が最も多い」理由があるからです。例えば、安全設備が設置できない危険箇所については不安全行動をしないよう作業員間で声をかけあう、事業者や作業員間の連絡・調整に多くの時間をかけたり方法を工夫したりする、といった対策のポイントが見えてきます。

【2】具体的な対策

ヒューマンエラーを防ぐ具体的な対策としては、大きく次の2つの方向があります。(参考文献※3)

○ヒューマンエラーが発生しても大丈夫なような安全設備面の対策
○ヒューマンエラーが発生しないような現場の安全管理活動の充実

ヒューマンエラーが発生しても大丈夫なような安全設備面の対策

建設現場は、適切な安全設備の設置に限界があります。しかし、「人は誰でも間違える」ことを前提として、可能な限り適切な安全設備を設置することは非常に重要かつ有効な対策です。

ヒューマンエラーの12分類のうち、特に、不注意近道本能行動場面行動本能パニック錯覚単調作業による意識低下は、「瞬間的に注意力が適切に働かない」状態ですから、「最終的な安全確保を人の注意力に頼らない」ような安全設備を整えることが効果的な対策となります。

具体的な対策例としては、安全帯、墜落防止ネット、墜落防止手すり、各種保護具の着用、差し筋の養生キャップや曲げ加工、各種リミット装置(安全弁、ガス警報器、漏電遮断機、重機の接触防止等)といったものが挙げられます。

ヒューマンエラーが発生しないような現場の安全管理活動の充実

適切な安全設備の設置に限界がある、作業のマニュアル化に限界があるのが、建設現場の特徴です。このため、「作業員ひとりひとりがヒューマンエラーを起こさない」ために、現場の安全管理活動を充実させることが、非常に重要な対策となります。

ヒューマンエラーの12分類のうち、特に、未経験危険軽視連絡不足集団欠陥中高年の機能低下疲労等は、「あらかじめエラーが発生しやすい状況が作業員に内在している」といえます。このような危険な状況を作らない、もしくは早期に発見し改善できるような安全管理活動が効果的です。

安全管理活動では、「集団の力をうまく活用する」という視点も大切です。
「作業員ひとりひとりが高い安全意識を持って注意深く行動する」ことが重要なのは、言うまでもありません。しかし、個人の注意力には限界があります。また、例えば「現場の朝礼でヒヤリハット事例の報告会をする」など、個人の安全意識を高める上でも、集団の力は効果的です。

ヒューマンエラーを防ぐ具体的な安全管理活動としては、下記のものが挙げられます。
・作業の技能教育・訓練
・安全衛生に関する教育・訓練
・ヒヤリハットの蓄積・共有
・KY活動(危険予知活動)
・パトロール
・危険作業はひとりでやらずにペア・コンビで行う
・現場での声のかけあい(危険を指摘しあう等)
・職長や安全衛生責任者等の教育・訓練
・明確な安全指示(誰が何をするのか)

この他にも、それぞれの事業所、建設現場の状況に応じて、様々な活動が工夫できるでしょう。

 

 

以上、建設業における「労働災害とヒューマンエラー」についてみてきました。
安全関係で大変有名な実話に「1万人の1人」があります。(参考文献※2)

ある製鉄会社の労働災害で夫を亡くした妻が、弔問に訪れた工場の労務部長に次のように言いました。「工場にとって主人の死は1万人の中の1人を失っただけですが、わが家では、私は…人生のすべてを失ってしまいました」。この言葉に労務部長は大きな衝撃を覚え、「1人1人かけがえのない人なのだ、労働災害は絶対あってはならない」と心底から悟ったといいます。

ヒューマンエラーを防ぐことで無くせる労働災害があり、守れる命があります。「人は誰でも間違える」のですから、安全設備や安全管理活動の充実はもちろんのこと、「個人のヒューマンエラー」を補い合える現場の雰囲気づくりが大切です。

(参考文献※2、※3、※5、※7、※8)

 

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